○田中 惠子1,2, 川村 名子1, 崎村 建司1, 阿部 学1 (1.新潟大学脳研究所モデル動物開発分野, 2.福島県立医科大学多発性硬化症治療学講座)
セッション情報
シンポジウム
シンポジウム15
自己免疫性疾患/脳炎・脳症と精神症状
2023年6月22日(木) 10:45 〜 12:45 K会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G402)
司会:神林 崇(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構/茨城県立こころの医療センター), 来住 由樹(地方独立行政法人岡山県精神科医療センター)
メインコーディネーター:神林 崇(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構/茨城県立こころの医療センター)
サブコーディネーター:高木 学(岡山大学学術研究院医歯薬学域精神神経病態学教室), 来住 由樹(地方独立行政法人岡山県精神科医療センター)
神経免疫学領域は近年、抗体測定系の技術革新とともに著しい進展を遂げた。これに伴い、原因不明の非感染性脳炎として治療が行われてきたものの一部が、神経細胞表面抗原に対する抗体介在性の自己免疫性脳炎・脳症であることが判明した。これらは既知の、悪性腫瘍に伴う古典的な傍腫瘍性神経症候群(Paraneoplastic neurological syndrome: PNS)とは異なり細胞傷害性T細胞の関与が少なく器質的なダメージを生じにくいこともあり、早期診断と強力な免疫療法の導入により良好な予後が得られることが分かっている。なかでも我々精神科医がとくに注意すべき疾患としては、緊張病症状を伴い統合失調症、双極性感情障害、非定型精神病などとの鑑別が重要となる抗N-methyl D-aspartate receptor(NMDAR)脳炎が挙げられる。典型的には若年女性で卵巣奇形腫を伴い、感冒症状に続きカタトニア症状を呈し、病期が進行するにつれ自律神経症状や意識障害、けいれんなどの身体症状を生じいわゆる「悪性緊張病」「致死性緊張病」様の状態に至る。次いで頻度の高い抗leucine-rich glioma inactivated 1(LGI-1)抗体脳炎は、急速進行性認知症や難治性てんかんの成因となりうるため、やはり鑑別が重要となる。
現在、神経細胞表面抗原に対する抗体介在性のCNS疾患は上記を含めおよそ19種類が挙げられるが、これらの自己抗体は脳炎(脳症)や脱髄性疾患をはじめとし、てんかん、急速進行性認知症、睡眠障害、運動障害、ヘルペスウイルスをはじめとしたウイルス性脳炎後の自己免疫性脳炎など、多種の病態に関与している。
また、膠原病をはじめとした自己免疫疾患と精神症状については広く知られているが、免疫と、これに伴い生じる症状についての知識の整理も今改めて必要であると思われる。
本シンポジウムを通じ、自己免疫性脳炎に関する基本的な知識、最新の知見、抗体測定法とその差異、精神科領域で特に注目すべき病態とその研究、精神神経疾患のバイオマーカーとしての自己抗体、基礎的な研究への波及など、明日からの臨床にも役立つ多彩な情報を共有出来れば幸甚である。
○高木 学 (岡山大学学術研究院医歯薬学域精神神経病態学)
○千葉 悠平1, 阿部 紀絵2, 服部 早紀2, 伊倉 崇浩2, 斎藤 知之6, 勝瀬 大海2, 須田 顕2, 藤城 弘樹3, 高橋 幸利4, 西野 精治5, 菱本 明豊2 (1.積愛会横浜舞岡病院精神科, 2.公立大学法人横浜市立大学附属病院精神科, 3.名古屋大学医学部附属病院, 4.静岡てんかん・神経医療センター, 5.スタンフォード大学医学部精神医学, 6.誠心会よりどころメンタルクリニック横浜西口)
○筒井 幸1,2,3, 大森 佑貴4, 神林 崇5,6, 加藤 倫紀1, 嵯峨 佑史1, 三島 和夫3, 清水 徹男7, 加藤 征夫1, 田中 惠子8 (1.医療法人祐愛会加藤病院精神科, 2.平鹿総合病院心療センター, 3.秋田大学医学部附属病院, 4.東京都健康長寿医療センター, 5.茨城県立こころの医療センター, 6.筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構, 7.秋田県精神保健福祉センター, 8.新潟大学脳研究所モデル動物開発分野)