JSPN119

Session information

シンポジウム

シンポジウム19
あるがままとマインドフルネスの間-東洋と西洋の精神療法の相違-

Thu. Jun 22, 2023 1:15 PM - 3:15 PM G会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G314+G315)

司会:舘野 歩(東京慈恵会科大学附属病院精神医学講座), 小野 和哉(聖マリアンナ医科大学神経精神科)
メインコーディネーター:舘野 歩(東京慈恵会科大学附属病院精神医学講座)
サブコーディネーター:小野 和哉(聖マリアンナ医科大学神経精神科)

1990年代になり第三世代の認知行動療法が台頭してきた。従来の認知行動療法と違い、①認知の内容を変えず文脈を変える、②そのためにアクセプタンスやマインドフルネスと言った東洋的な技法を取り入れていることが特徴である。第三世代の認知行動療法の代表例としては弁証法的行動療法(DBT)(1993)やマインドフルネス認知療法(MBCT)(2001)などがある。弁証法的行動療法(DBT)とは境界性パーソナリティ障害に特化した治療法で、現実的な対人関係で起こる様々な問題行動を患者のソーシャルスキル能力の不足と捉えてそのトレーニングを徹底する技法である。そして今その瞬間における自分自身と自分の世界をありのまま受容することを患者へ教える必要性を強調する。マインドフルネス認知療法(MBCT)とは、心に浮かぶ思考や感情に従ったり価値判断をするのではなく、ただ思考が湧いたことを一歩離れて観察するというマインドフルネスの技法を取り入れ、否定的な考え、行動を繰り返さないようにすることで、うつ病の再発を防ぐことを目指す。その後治療対象を緩和ケア領域へ広げている。また2010年にはマインドフル・セルフ・コンパッションが登場し海外国内でベストセラーを飾っている。マインドフル・セルフ・コンパッションとはマインドフルネスストレス低減法をベースに「自分への思いやり」を明示的に扱う心理プログラムである。治療対象は不安やうつからアトピー性皮膚炎へ広がっている。各治療とも「あるがまま」の自己を受け入れることを目指しているように思われる。一方日本で生まれた森田療法は1919年に誕生した神経症性障害に対する精神療法で、不安に対する態度を転換し建設的な行動を促し「あるがまま」を治療目標としている。森田療法はうつ病遷延例や心身症領域などへ適応を広げている。つまり西欧で生まれた精神療法が森田療法に近づいているように見える。しかし各精神療法の治療対象、精神病理仮説は異なっていると思われる。そこで今回は弁証法的行動療法(DBT)、マインドフルネス認知療法(MBCT)、マインドフル・セルフ・コンパッション、森田療法の専門家を招き、各治療の主な対象、精神病理仮説と技法、治療目標について述べて頂く。弁証法的行動療法(DBT)についてはいち早く日本語訳をいち早くされ治療実績を積まれている聖マリアンナ医科大学神経精神医学教室小野和哉先生に、マインドフルネス認知療法(MBCT)を緩和ケア領域に発展させていらっしゃる慶応大学医療安全管理部/精神神経科藤沢大介先生に、マインドフル・セルフ・コンパッションについてはいち早く日本へ導入をされている京都大学大学院医学研究科健康増進・行動学分野の岸本早苗先生に、森田療法についてはその発祥の地である東京慈恵会医科大学精神医学講座舘野歩が担当する。デイスカッションを通して各精神療法の特徴を浮き彫りにできると考えている。