○結束 貴臣 (国際医療福祉大学成田病院緩和医療科)
セッション情報
シンポジウム
シンポジウム22
精神科領域における便秘症について考える
2023年6月22日(木) 13:15 〜 15:15 N会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G412+G413)
司会:水野 雅文(東京都立松沢病院), 稲本 淳子(昭和大学横浜市北部病院メンタルケアセンター)
メインコーディネーター:山田 浩樹(昭和大学横浜市北部病院メンタルケアセンター)
サブコーディネーター:坪井 貴嗣(杏林大学医学部付属病院精神神経科学教室)
便秘症は全世界で高頻度に見られる機能性腸障害である。慢性便秘の症状をもつ対象者は生存率が低下するリスクがあることや,便秘症あるいは下剤を使用している状態は全死亡,慢性心不全および虚血性脳卒中の発症リスクの高さに独立して関連していることも示されており,便秘症は生命予後に悪影響をおよぼす疾患であるという認識が必要である。日本消化器病学会関連研究会「慢性便秘の診断・治療研究会」編集による慢性便秘症ガイドライン2017では,抗コリン作用を有す種々の向精神薬による消化管運動の緊張や蠕動運動,腸液分泌の抑制作用により,慢性便秘症を生じるリスクが高いことが指摘されている。向精神薬による便秘のメカニズムとして,抗コリン作用の他、ドパミン受容体遮断作用が仙髄副交感神経の節前神経の興奮を抑制することにより,下降性疼痛抑制系を介したドパミンによる結腸,直腸の運動を低下させ,便秘を引き起こす可能性があることも示唆されている。精神疾患の治療においては,抗コリン作用,ドパミン受容体遮断作用をもつ種々の向精神薬が処方され,時に複数のカテゴリーの向精神薬が投与されたり,錐体外路症状の治療や予防のために抗コリン作用の強い抗パーキンソン薬が併用されたりする場合があり,このような状況にある精神科の患者の便秘症発症リスクは高いと推測される。しかし精神科領域において便秘症のリスクに関して包括的に検討した研究は少なく,精神疾患の治療に関連した国内外のガイドラインにおいても,向精神薬の副作用である便秘について触れているものはわずかである。精神科医にとって便秘症ほど普遍的でありながら、その予防や対策において十分な検討がなされてこなかった身体合併症はないのではないだろうか。本シンポジウムでは改めて精神科領域における便秘症に着目し、精神科医のみならず便秘症治療について経験豊富な身体科の医師を交えて、便秘症に関する最新の知識、精神科領域における便秘症に関するこれまでのエビデンス、国内における臨床研究、そして精神科病院における便秘症改善の試みについて示す。さらに精神科医が身体合併症に注意すること、身体疾患についての知識を深めることの重要性について論じる場としたい。
○坪井 貴嗣 (杏林大学医学部付属病院精神神経科学教室)
○山田 浩樹1,2 (1.昭和大学横浜市北部病院メンタルケアセンター, 2.昭和大学医学部精神医学講座)
○長尾 知子 (都立松沢病院内科)
○小野 正博 (福島県立宮下病院)