第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム23
統合失調症治療におけるLAIの臨床的意義

2023年6月22日(木) 13:15 〜 15:15 O会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G414+G415)

司会:根本 豊實(磯ヶ谷病院精神科)
メインコーディネーター:根本 豊實(磯ヶ谷病院精神科)

統合失調症の治療において、薬物療法が最も重要であることを否定する人はごく少数であろう。そして、その薬物療法のなかでも、LAIの適切な使用は極めて重要であり、また必要でもあると、われわれは考えている。第二世代の抗精神病薬のLAIが複数使用可能となった今こそ、拒薬や病識の乏しい患者だけではなく、薬物反応性の良い社会生活レベルが比較的高く保たれる患者も含めて、広範にLAIの使用を推進すべきであると、われわれは考えている。思えば、第二世代の抗精神病薬の登場は、重篤な副作用からの解放という意味で、患者にとって福音であったことは誰も否定できないだろうが、長期経過という点でみるとそれほどの進歩は見られず、再発をしてしまう患者はあまり減少しておらず、また過感受性精神病という視点で考えれば治療困難例を量産してしまっている状態にさほどの改善が見られないのが現状であろう。これらを解決する最良の方略のひとつは、LAIの適切にしてより広範な使用であると、われわれは考えている。言うまでもなく、LAIを使用すればすべての問題が解決するわけではない。心理社会的治療の重要性や治療関係の確立への努力の大切さ、そして家族も含めた周囲の環境の整備の意義など、統合失調症の治療においてこれらの側面の臨床的価値の大きさは、いささかの疑問を持つものではないどころか、われわれは長期にわたってこれらの側面に関し、臨床の現場で可能な努力を傾注してきたものである。その上でのことだが、現在の我が国のLAIの普及率は、欧米等と比べてもあまりに低いと言わざるをえない。この普及を広範化するためには、現状においてもいくつかの課題が挙げられようが、このシンポジウムでは、LAI使用に比較的積極的な3つの精神科病院の実践報告を参考にしながら、例えばどのような患者に導入すべきか、どのような方法で導入すべきか、どのような時期に導入すべきか、など様々な臨床的課題を指定討論者等との討論を通して検討し、解決策を探ってゆきたいと考えている。