○井上 建 (獨協医科大学埼玉医療センター子どものこころ診療センター)
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シンポジウム
シンポジウム27
コロナ禍における若い世代の摂食障害~発症数の増加とその要因~
Thu. Jun 22, 2023 3:30 PM - 5:30 PM E会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G301+G302)
司会:西園マーハ 文(明治学院大学心理学部), 井上 幸紀(大阪公立大学大学院医学研究科神経精神医学)
メインコーディネーター:井上 幸紀(大阪公立大学大学院医学研究科神経精神医学)
サブコーディネーター:西園マーハ 文(明治学院大学心理学部)
新型コロナ感染症の世界的流行が始まって以来、各国から児童思春期の摂食障害の発症が増えたという報告がなされている。専門治療が行われている国においても、患者数の増加で適切な治療が提供できない場合も多いという。そして、患者増加の背景要因として、さまざまな生活環境の変化が指摘されている。日本においてもいくつか調査が行われているが、摂食障害は、小児科、心療内科、精神科などさまざまな専門科で診療されているため、全体像が見えにくい面がある。今回のシンポジウムは、コロナ禍の摂食障害に関する知見を集約し、今後の治療提供や早期援助の方法論について検討することを目的とする。演題は4題を予定している。井上建(獨協医科大学埼玉医療センター 子どものこころ診療センター講師)は、「Impact of COVID-19 pandemic:摂食障害全国調査が教えてくれたこと」を発表予定である。2022年5月に、日本摂食障害学会の会員を対象に、小中高校生の患者数等について全国調査を実施した結果を中心に発表する。原田朋子(大阪公立大学医学部神経精神科講師)は、「COVID-19パンデミックによる10代の摂食障害患者の変化と診療の工夫」を発表予定である。パンデミック以前と以降の発症要因についての検討、COVID-19流行に伴って診療にどのような工夫をしたかについて報告する。吉内一浩(東京大学医学部心療内科准教授)は、「COVID-19による在宅時間の増加による摂食障害発症への影響」について、調査結果を中心に発表予定である。COVID-19パンデミック前後の外来初診患者の発症時期の変化により、パンデミック後に新規発症が増加したこと、カルテ調査による在宅時間の増加の影響などを考察する。林公輔(学習院大学准教授)は、「コロナ禍における若年者の摂食障害‐精神科病院の場合」について発表予定である。コロナ禍に精神科病院でも中高生の入院が増えたが、その背景等について考察する。座長は、西園マーハ文(明治学院大学心理学部教授)井上幸紀(大阪公立大学医学部神経精神科教授)が務める予定である。以上、4演題を通じて、コロナ禍に若い世代に摂食障害が増えているという現象の意味について検討する。この現象から読み取るべきは、単に、世界的な災厄時に、若い世代のストレスが増大して精神疾患が増えるということだけではないだろう。この期間に起きたことを振り返ることは、若い世代と、学校、家庭、同年代との関係、またこの世代に及ぼす社会やメディアの意味を考え直す貴重な機会である。これらを検討して発症が増えたメカニズムを少しでも明らかにすることができれば、「平時」における発症予防や早期援助にも極めて有用な知見となるであろう。なお、このシンポジウムは、日本摂食障害学会の推薦を受けている。
○原田 朋子 (大阪公立大学大学院医学研究科神経精神医学)
○吉内 一浩 (東京大学医学部附属病院)
○林 公輔1, 金井 希人2, 星野 大3, 重田 理佐3, 西園マーハ 文4 (1.学習院大学文学部心理学科, 2.オリブ山病院, 3.特定医療法人群馬会群馬病院, 4.明治学院大学)