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シンポジウム

シンポジウム31
治療失敗リスクを下げる精神病性障害急性期の治療方略

Thu. Jun 22, 2023 3:30 PM - 5:30 PM J会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G403+G404)

司会:八田 耕太郎(順天堂大学医学部附属練馬病院メンタルクリニック), 杉山 直也(公益財団法人復康会沼津中央病院)
メインコーディネーター:八田 耕太郎(順天堂大学医学部附属練馬病院メンタルクリニック)
サブコーディネーター:杉山 直也(公益財団法人復康会沼津中央病院)

急性の精神疾患、特に興奮を伴う疾患は、エビデンスの作られにくい領域である。その典型である救急・急性期の現場で生じた臨床疑問に対して、その現場に則しかつ信頼に足る解答を見つけることは、意外に容易ではない。現場で生じる疑問の多くは、理想的な治療経過を辿らない患者についてである。しかし、一般的な臨床ガイドラインは、臨床試験に対してインフォームドコンセントを取得できる言わば理想的な患者しか組み入れにくい二重盲検ランダム化臨床試験(RCT)の成果を基にしていることが多いため、現場で治療を試行錯誤するような状況については本質的に答えられない。これに対して日本精神科救急学会は、Leuchtらのグループの研究成果に代表されるようなRCTのメタ解析(Lancet 2019; 394: 939-51など)、Tiihonen らのグループによるスウェーデンの国家規模データベースの解析(JAMA Psychiatry 2017; 74: 686-93など)、および日本精神科救急学会の多機関共同研究であるJAST study groupによるRCTやリアルワールドエビデンス(Asian J Psychiatry 2022; 67: 102917など)を相補的に統合して、精神科救急医療ガイドライン2022年版として公開している(https://www.jaep.jp/)。今回の改訂版は、長期展望を見越した方略についてこれまで以上に力点を置いている。具体的には治療失敗という真のアウトカムを指標にした持効性抗精神病薬注射の有用性について触れているが、その後の課題としてブレイクスルーサイコーシスへの対応を検討しなければならない。同様に真のアウトカムを指標にした抗精神病薬併用の有用性を明示しているが、ドパミン過感受性精神病((Iyo M et al. J Clin Psychopharmacol 2013; 33: 398-404)の視点からその後どう収束させるかの検討も必要である。さらに、精神病性障害急性期においてECTは第一選択ではないが頼らざるを得ない局面は存在し、それを明示しているが今後詳細について整理していく必要である。そこで本シンポジウムでは、精神科救急医療ガイドライン2022年版の概説に続き、前述の課題について各演者に講演いただき、議論を深めたい。1. 救急急性期の現場における抗精神病薬選択:精神科救急医療ガイドライン2022年版から(順天堂大学,八田耕太郎) 2. 持効性抗精神病薬注射の次の課題:ブレイクスルーサイコーシスにどう対応するか?(関西医科大学,嶽北佳輝) 3. やむを得ず開始した抗精神病薬併用をどうするか:ドパミン過感受性精神病の視点から(千葉大学,伊豫雅臣) 4. 精神病性障害急性期におけるECTの使いどころ(国立精神・神経医療研究センター,野田隆政) なお、本案は日本精神科救急学会の推薦シンポジウムである。