第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム44
精神科へき地医療の新しい時代に向けて

2023年6月23日(金) 08:30 〜 10:30 K会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G402)

司会:小澤 寛樹(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻精神神経科学)
メインコーディネーター:小澤 寛樹(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻精神神経科学)
サブコーディネーター:中村 雅之(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科精神機能病学分野), 岩田 正明(鳥取大学医学部精神行動医学分野)

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離島をはじめとしたへき地の医療圏は、人口減少が急速に進んでいる。少子・高齢化等により、病院経営を取り巻く環境は厳しいものとなっている。ほぼ全ての診療科目において医師が少ない状況にある。医療資源の確保は喫緊の課題となっている。精神科診療においても課題は同様である。患者様にとって医療機関へのアクセスは悪く、入院の際には相当数の距離を移動することも少なくない。地域への退院計画にもへき地ならではの課題がある。中・長期的な地域住民のニーズを踏まえ、必要な急性期機能の維持や適正かつ効率的な医療機器や施設の整備・運営が求められている。
最近の科学技術の進歩は目覚ましいものがある。遠隔治療技術の進歩は離島、へき地医療への応用への期待感を抱かせる。人工知能、ロボット技術も遠隔医療やへき地での高度な医療への貢献が期待される。本シンポジウムではへき地医療を実践する専門家がそれぞれの地域の現状、取り組みについて紹介し、次世代の先進的なへき地医療について展望する。以下の5つの演題で構成される。
山陰におけるへき地支援:島根県と鳥取県がともに「山陰」という一つの医療圏を形成し、互いに協力しながらへき地の医療を支援している現状と未来について、本島から北へ約50キロ、フェリーで2時間半かかる隠岐島(隠岐諸島)の精神科医療を中心に考察する。
長崎県における離島・へき地支援:長崎県で離島・へき地医療支援センターを設置し、離島・へき地における診療所などの医師確保や代診医の派遣などを行うことにより、当該地域における住民の医療の確保を図ってきた取り組みや人型ロボットを補助ツールとして用いた二次離島支援の現状について説明する。また現在までの実践結果を基に、へき地支援の今後の課題について考察する。
鹿児島県における離島・へき地支援:鹿児島大学病院神経科精神科から人材派遣を行っている現状、課題について説明する。鹿児島県は、南北600 km、東西300 kmに渡る広大な県土に28の有人離島が存在する。精神科医師不足が進みつつあり、離島における精神科医療支援の体制作りは喫緊の課題である。人材派遣に加えて今後のwebアプリなどを用いた遠隔医療体制作りなどを模索しており、それらの取り組みなどについて紹介する。
沖縄県における離島・へき地支援:沖縄県では、沖縄県地域医療支援センターと県立病院、琉球大学病院からの医師派遣だけでは十分な医療が提供できていない。沖縄県及び鹿児島県奄美群島への医療支援や遠隔医療の経験を含め、精神科僻地医療の現状を報告する。民間精神科病院や診療所からの応援医師の力を得て、地域精神医療体制を整えており、今後の課題について考察する。
児童精神科におけるへき地支援:長崎大学病院地域連携児童思春期精神医学診療部を中心に行ってきた、長崎県内で50名弱の児童精神科医を育成した事業について説明する。育成した児童精神科医は県内各地で児童精神科医療に従事する一方で、課題も山積している。本セッションでは現状、今後の課題について考察する。

今村 明1,4, 山本 直毅1, 三宅 通1, 熊﨑 博一1,2, 小澤 寛樹3, 岩永 竜一郎4, 田中 悟郎4 (1.長崎大学病院地域連携児童思春期精神医学診療部, 2.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科未来メンタルヘルス学, 3.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科精神神経科学, 4.長崎大学大学院医歯薬総合研究科作業療法学)