第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム46
新専門医制度施行後の身体科領域の生涯教育について

2023年6月23日(金) 08:30 〜 10:30 P会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G416+G417)

司会:清水 勇雄(特定医療法人恵風会高岡病院精神科、内科), 俊野 尚彦(十条産業保健事務所)
メインコーディネーター:清水 勇雄(特定医療法人恵風会高岡病院精神科、内科)
サブコーディネーター:俊野 尚彦(十条産業保健事務所)

 新精神科専門医制度の施行後5年が経過したが、引き続き課題は残されている。精神疾患の診断は器質的疾患の除外を前提とし、DSM-5の『症状は, 物質, または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない』の記載は有名である。しかし実際にその診断能力を向上する手段に関しては、依然カリキュラムに記載がない。特に単科精神科病院では、常勤内科医が不在な場合が多く、その場合精神科医が身体疾患を除外し、併存疾患を管理する必要に迫られる。高齢化に伴い入院患者の平均年齢は高まり、当然身体疾患の合併率も高まっているが、身体科領域に関する研鑽は各施設や精神科医が独自に行っているのが現状であろう。

 企画者は総合内科専門医を取得し現在精神科医・内科医として勤務しているが、共に診断・治療を行う中で、多くの精神科医が身体管理の重要性を理解しながらも研鑽の仕方がわからず、教育を受ける機会を持てずに不全感を抱えていることを知り、自院で専攻医対象の勉強会を開催し、昨年から全国の精神科医とWeb勉強会を開催している。そして現状を問題視し、第114・115回総会でシンポジウム開催に至った。議論を深めた結果、専攻医と同様に思い悩む精神科医が日本中に多数存在することがわかり、精神科専門医制度における内科教育の必要性をフロアで共有した。また参加者に5段階のアンケートを実施し、『内科疾患を勉強したいが、どう勉強したらいいかわからない』と『時間がない』の得点に解離があり、自己研鑽の困難さが示唆された。必要性を十分に感じていない精神科医にどう教育するかといった教育者側の困難さがあることも想像に難くなく、『来年も関連シンポジウムがあれば参加したい』の項目では平均4.41とシンポジウムに一定の意義があるものと考えられた。

 今回はシンポジストとして、新専門医制度で研修を受けた立場から小笹俊哉氏、指定医取得後も自己研鑽を続けている立場から小橋大輔氏、大学病院で専攻医教育をしている立場から角幸頼氏、医師が専門知識を共有し臨床力を高め合うITプラットフォームとしてexMedioを立ち上げ、自身も精神科医として臨床を続けている物部真一郎氏、元精神科医で現在は救急医として精神・身体両面からの臨床研究を行っている石田琢人氏、内科教育担当の企画者の計6名が、問題提起・具体的な提案を行う。

 指定発言として、医学教育専門家の立場から大学医局で教育・研究を行っている松坂雄亮氏、元都立松沢病院 内科部長として研修医教育に携わっていた小野正博氏、単科精神科病院で臨床教育センター長として教育に携わる長徹二氏を招聘し、専門医研修中そして取得後の身体科領域の生涯教育について、必要性を感じながら自己研鑽が十分にできない現状や教育における困難さを共有し、現在専門医研修中の医師、教育担当の医師、研鑽を積みたいと思っている医師まで、様々な立場から具体的な方法を交え、広く議論を交わしたい。

 そして解決策をフロアの皆さんと共に模索し、悩める精神科医の一助となれることを祈っている。