○中里 道子1,2 (1.国際医療福祉大学医学部精神医学精神科, 2.千葉大学医学部附属病院精神神経科)
セッション情報
シンポジウム
シンポジウム47
これからの摂食障害治療を考える:スタンダードな身体管理と精神療法に向けて
2023年6月23日(金) 10:45 〜 12:45 C会場 (パシフィコ横浜ノース 1F G6)
司会:中里 道子(国際医療福祉大学医学部精神医学精神科), 竹林 淳和(浜松医科大学附属病院精神科神経科)
メインコーディネーター:中里 道子(国際医療福祉大学医学部精神医学精神科)
サブコーディネーター:竹林 淳和(浜松医科大学附属病院精神科神経科)
【目的】摂食障害(eating disorders: ED)、中でも、神経性やせ症(Anorexia Nervosa: AN)は、著しい低体重、肥満恐怖、体形や体重の体験の仕方の障害を呈する難治の精神疾患である。著しい低体重を呈するANに対しては入院治療を必要とし、心身両面からの包括的な治療が必須である。NICE(2004)やAPA(2006)のガイドラインでは、身体的リスクの高い低体重・低栄養状態のAN患者は再栄養症候群refeeding syndromeの発現に注意し、低いカロリー量から栄養療法を開始し、電解質・ビタミン・ミネラルの補充と身体的モニタリングを行うことが推奨されている。標準的な精神療法に関しては、成人のANに対する外来精神療法として、強化型認知行動療法(CBT-E;enhanced cognitive behavior therapy)、モーズレイ神経性やせ症治療(Maudsley Anorexia Nervosa Treatment for Adults; MANTRA)、および支持的臨床管理(specialist supportive clinical management: SSCM)、児童思春期のANに対しては、Family-Based Therapy(FBT)等が推奨されている。本シンポジウムでは、神経性やせ症に対するスタンダードな精神療法、身体管理に関して、国内外のガイドラインに基づくレビューおよび、日本の臨床現場で実践するための、身体治療マニュアルの開発、成人ANに対するMANTRAの概要、成人ANに対するCBT-Eの概要、FBT治療マニュアルの開発についての報告を行う。【方法】MANTRAは、Treasure J, Schmidt U等により開発されたANに対するマニュアルに基づく外来ベースの精神療法である。ANの症状維持の要因として、認知の特性、感情の困難さ、対人関係,ANに価値を置く信念に焦点付けし,ケースフォーミュレーションを行い,治療の全般を通じて、動機づけを高め、20セッション以上を原則とする個人精神療法である。本邦で多施設ランダム化研究を進捗中であり、日本での適応に向けての課題を議論する。CBT-Eは、日本においても、平成30年4月より、神経性過食症に対する認知行動療法として、診療報酬を算定することが可能となった。本発表では、神経性過食症に対するCBT-Eに加えて、神経性やせ症に対するCBT-Eおよび、CBT-Eの研修システムを紹介する。児童思春期神経性やせ症に対しては、家族を治療の重要な協力者として積極的に関与を促していくFamily based treatment(FBT)が広く世界で実施され、着実にエビデンスを構築してきている。現在、国内でFBTを実施している施設の協力のもと、国内に向けた対応指針を作成準備中であり、本発表では、FBTの国内での実践に向けての課題を討論する。【結論】欧米諸国を中心とした摂食障害の治療ガイドライン、スタンダードな精神療法を日本の臨床現場に適応するためには、我が国での効果や安全性検証と治療マニュアルの開発、地域の治療現場に提供するために多職種の研修や普及に向けた取り組みが必要である。
○竹林 淳和1, 原田 朋子2, 栗田 大輔3, 井上 幸紀2 (1.浜松医科大学医学部附属病院精神神経科, 2.大阪公立大学大学院医学研究科神経精神医学, 3.社会福祉法人聖隷福祉事業団総合病院聖隷三方原病院精神科)
○北島 翼 (獨協医科大学埼玉医療センター子どものこころ診療センター)
○河合 啓介 (国立国際医療研究センター国府台病院心療内科)