○田所 重紀 (札幌医科大学附属病院)
セッション情報
シンポジウム
シンポジウム5
精神療法と治癒像
2023年6月22日(木) 08:30 〜 10:30 H会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G316+G317)
司会:新村 秀人(大正大学心理社会学部), 北西 憲二(森田療法研究所、北西クリニック)
メインコーディネーター:新村 秀人(大正大学心理社会学部)
サブコーディネーター:北西 憲二(森田療法研究所、北西クリニック)
本シンポジウムでは、これまでの学術総会で行われたシンポジウム「フロイト、ユング、森田の人間観とその精神療法が目指すもの」(2020年)、「精神療法と身体」(2021年)、「精神療法と技法-治療理論との必然的結びつきに着目して」(2022年)の成果をふまえて、19世紀に生まれた精神療法の源流(フロイトの精神分析療法、ユングの分析心理学、森田正馬の森田療法)および、精神医学の哲学の視点から、精神療法のあり方とその精神療法によって治療された患者の治癒像について考察する。
そもそも、精神に働きかける治療介入である精神療法は、どうしても身体を通じてしか精神にアプローチし得ないし、介入の結果生じる変化も、精神のみならず身体にも生じる。心身に働きかける精神療法が、どのようにして精神的不調や精神症状を回復・寛解・治癒させるのか、哲学的視点から考える。
その上で、ある精神療法が、患者・人間・身体をどのようにとらえ(人間観・身体観)、精神的不調や精神症状をどのように理解し(精神病理)、症状に対してどのような治療介入を行い(治療論・技法論)、その治療介入の結果、患者はどのような姿に変化している(あるいは、変化していない)のか(治療プロセス)は、一貫した理論や方法で連続しており、その流れの中で精神療法における治癒像とは何か、を考えたい。
そして、人間観・身体観-精神病理-治療論・技法論-治療プロセス-治癒像という一貫した視点から各療法の特徴を明らかにしていく。このことは、現在の多様な精神療法について考えていく上でも寄与するところがあると思われる。
田所は、森田療法の最終的な治療目標であるとされる「あるがまま」に焦点をあて、その内実をメタ心理学的観点から明らかにするとともに、この「あるがまま」が精神療法一般の普遍的な治癒像となり得るかどうかを検討する。加藤は、フロイトが創始した古典的精神分析を実践する立場から、身体を拘束する寝椅子での自由連想によるこころの自由の獲得と、悲劇をありきたりの不幸として抱えるようになる治癒像との関連について検討する。林は、分析心理学の立場から, ユングのいう心の「全体性」という視点から治癒像について考察し, 夢をはじめとしたイメージに注目することの意味について検討を行う。新村は、森田療法の治癒像である「あるがまま」(不安を持ちつつ行動・体験していく)と「素直な心/純な心」(環境・自然に従う、心的流動性)について、アクセプタンスとコミットメント、マインドフルネス、コンパッションとの異同を含めて検討する。以上をふまえて、北西が連続シンポジウムのこれまでの成果にも触れつつ、指定発言を行う。
○加藤 隆弘 (九州大学大学院医学研究院精神病態医学)
○林 公輔 (学習院大学文学部心理学科)
○新村 秀人1,2 (1.大正大学心理社会学部, 2.慶應義塾大学医学部精神神経科学教室)
○北西 憲二 (森田療法研究所、北西クリニック)