○嶋田 博之 (東日本矯正医療センター)
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シンポジウム
シンポジウム50
いまなぜグループか?新しいつながり時代の集団精神療法
Fri. Jun 23, 2023 10:45 AM - 12:45 PM H会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G316+G317)
司会:田辺 等(医療法人北仁会旭山病院)
メインコーディネーター:林 公輔(学習院大学文学部心理学科)
サブコーディネーター:嶋田 博之(東日本少年矯正医療・教育センター医療部)
私たちが生きる現代社会では、人と人との直接的な接触の機会が減り、個別性・多様性が尊重されるようになった。たとえば、家庭に一台しかないテレビをみんなで楽しむといった一家団欒の姿は失われつつあり、それぞれがスマホを眺めたり自室でオンラインゲームを楽しんだりすることが多くなった。わざわざ買い物に行かなくても、ネットで注文すれば自宅まで配達してくれるようにもなった。
しかしその一方で、SNSなど、オンライン上でのつながりという新しい交流スタイルが生まれた。そこでは身体や距離といった物理的制約や時間などの隔たりを容易に超えることができ、さらには匿名のままで誰かとつながることもできる。このような新しいつながり方は、Covid-19のパンデミックによって、あっという間に私たちの日常生活に入りこんできた。たとえば学校では遠隔授業が急速に導入され、職場ではオンライン会議が日常化した。しかしそれは便利なだけでなく、在宅時間が長くなったことによる家族内葛藤の悪化など、新しいストレスをうんだ。
このような新しい人間関係や集団のあり方について検討することは、臨床的に非常に意義があると思われる。なぜなら私たちは、否応なく「新しいつながり時代」を生きており、そこから逃れることはできないからである。本シンポジウムのテーマがここにある。
しかし、まさに人間関係や集団を対象としている集団精神療法が精神科領域で活用されることは少ない。本学会の専門医制度においても、集団精神療法および集団力動について学ぶ必要性は認識され研修項目として含まれているが、実践している医師は少なく、集団力動が何を意味しているのか、治療の場で具体的に何をすればいいのかと戸惑う人もいるのではないだろうか。本シンポジウムでは「新しいつながり時代の集団精神療法」に焦点を当てつつ、そのような疑問に答えたいと考えている。
嶋田博之は精神療法の現場に急速に導入されたオンラインシステムを利用した集団精神療法実践とその可能性について発表する。加藤隆弘は現代社会のありようを表しているといえる「ひきこもり」の人たちに対するグループについて考察を行う。そして衞藤暢明は、コロナ禍に晒された総合病院に勤務する看護師を対象とした集団精神療法についての報告を行う。林公輔は精神科病院の慢性期閉鎖病棟におけるコミュニティミーティングを例にしつつ集団精神療法の現代的意義について再考する。それぞれの専門家による発表とそれに続く指定討論の重なりの奥から、「いまなぜグループか?」という問いに対する答えが立ち現れるだろう。
このシンポジウム自体も1つのグループである。発表を呼び水として、参加者を含めたグループ全体が活発な議論の場になることを期待したい。
なお、本シンポジウムは日本集団精神療法学会の推薦を受けている。
○加藤 隆弘 (九州大学大学院医学研究院精神病態医学)
○衞藤 暢明 (福岡大学医学部精神医学教室)
○林 公輔 (学習院大学文学部心理学科)
○岡島 美朗 (自治医科大学附属さいたま医療センターメンタルヘルス科)