○平野 羊嗣1,2 (1.宮崎大学医学部臨床神経科学講座精神医学分野, 2.九州大学大学院医学研究院精神病態医学)
セッション情報
シンポジウム
シンポジウム51
様々な生物学的現象から考える精神疾患の病態生理
2023年6月23日(金) 10:45 〜 12:45 I会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G318+G319)
司会:朴 秀賢(熊本大学大学院生命科学研究部神経精神医学講座), 岩田 正明(鳥取大学医学部精神行動医学分野)
メインコーディネーター:朴 秀賢(熊本大学大学院生命科学研究部神経精神医学講座)
サブコーディネーター:岩田 正明(鳥取大学医学部精神行動医学分野)
精神疾患の病態生理の解明を目指した生物学的精神医学研究は世界中で盛んに行われてきているが、膨大な研究結果の蓄積が成されていているにも関わらず、未だにモノアミン仮説に基づく薬物が臨床の現場では主体であり、抜本的に異なる機序に基づいて効果を発現する薬物の開発には至っておらず、既存の薬物に反応しない治療抵抗性の患者が少なくないのが現状である。加えて、有用なバイオマーカーも未だに発見されていない。従って、生物学的精神医学研究は残念ながら停滞していると言わざるを得ない。医学生物学的研究はその成果が臨床の現場に還元されることではじめてその真価を発揮するので、そうした到達点を目指したブレイクスルーを実現する道筋を考えていく必要がある。そのため、近年の生物学的精神医学研究の主なターゲットの1つは、モノアミン仮説を超える新たな病態仮説の確立である。そのような有能な病態仮説の基になる生物学的現象の中でも盛んに研究されているものとしては、神経活動、炎症、エピジェネティクス、神経細胞新生などが挙げられる。もちろん、これらの生物学的現象はそれぞれが独立して機能しているものではなく、互いに相互作用しながら精神疾患の病態生理に関与していると考えられる。しかし、実際の研究に際しては、ともすればそれぞれの生物学的現象に関する専門家が、各々の現象の範囲内で研究を進めていることが多い。そのため、それぞれの生物学的現象間の相互作用が十分に解明されていないことが、生物学的精神医学研究の停滞の一因なっている可能性がある。従って、生物学的精神医学研究にブレイクスルーを引き起こすためには、各生物学的現象間の関係について互いに密に連携しながら、双方向的に検討していくことが必要不可欠である。
そこで、本シンポジウムでは、各生物学的現象間の関係について各専門家が議論する機会を設け、精神疾患の病態生理の解明を目指した生物学的研究のブレイクスルーに貢献することを目的として、生物学的精神医学研究で近年盛んに研究されている上記4つの生物学的現象を専門とする以下の4名の専門家に、それぞれの現象に着目した研究の現在までの知見の総括と、他の現象との関係を含む今後の展望を紹介していただくこととした。①神経生理:九州大学精神科・平野羊嗣 ②神経炎症:鳥取大学精神科・岩田正明 ③エピジェネティクス:スタンフォード大学精神科・篠崎元 ④神経細胞新生:熊本大学精神科・朴秀賢
○岩田 正明 (鳥取大学医学部精神行動医学分野)
○篠崎 元 (スタンフォード大学医学部精神科)
○朴 秀賢 (熊本大学大学院生命科学研究部神経精神医学講座)