JSPN119

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シンポジウム

シンポジウム52
ハームリダクションを実践、症例ベースで考える

Fri. Jun 23, 2023 10:45 AM - 12:45 PM K会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G402)

司会:斎藤 利和(社会医療法人博友会平岸病院精神医学研究所), 宮田 久嗣(東京慈恵会医科大学精神医学講座)
メインコーディネーター:宮田 久嗣(東京慈恵会医科大学精神医学講座)

近年、アディクション(依存症)領域で、ハームリダクションという概念が注目されている。一例をあげると、ハームリダクションとは、そのときに社会で問題になっているハーム(たとえばHIV感染症の拡大)に注目し、ハームを起こしているリスク(汚染された注射器の使い回し)に対処しようとするものである。具体的には、清潔な注射器の提供であり、それによって、その社会の健康を守ろうとする公衆衛生的な戦略である。ただし、日本のハームリダクション潮流が、海外のように物質乱用の現場から生じたものではなく、医療サイドから注目されていることは、世界の中でも珍しい現象といえる。ハームリダクションの持つ人権尊重、人間理解、支援実践、偏見の排除などの理念が共感を得ているものと思われる。しかし、同時に、ハームリダクションでは物質使用を認めることや、疾病モデルをとらないことから、世界各国で議論を引き起こしてきた。ハームリダクションでは、どうしても議論が理念的、観念的となりがちなことから、本シンポジウムは、「ハームリダクションを実践・症例ベースで考える」というタイトルで、具体的にハームリダクションをどのように活用したらよいのかを考える。高野 歩先生にはHarm reduction psychotherapyという新しい考えを紹介していただく。湯本洋介先生には、ハームリダクションをベースにしたアルコール依存症治療の実践を症例を交えて紹介していただく。白坂知彦先生にはハームリダクションをベースにしたゲーム嗜癖の予防・啓発活動の実践をお話しいただく。成瀬暢也先生には、治療者―患者関係にハームリダクションをどのよう活かしたらよいのか具体的に提示していただく。このようなシンポジムを通して、日本におけるハームリダクションの在り方を議論していきたい。なお、本シンポジウムは、日本アルコール・アディクション医学会ハームリダクション特別委員会企画シンポジウムとして開催される。