○稲葉 一人 (いなば法律事務所弁護士)
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シンポジウム
シンポジウム53
臨床倫理コンサルテーションにおける精神科医の役割
Fri. Jun 23, 2023 10:45 AM - 12:45 PM N会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G412+G413)
司会:戸田 裕之(防衛医科大学校病院精神科学講座), 小川 朝生(国立がん研究センター東病院先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)
メインコーディネーター:戸田 裕之(防衛医科大学校病院精神科学講座)
サブコーディネーター:小川 朝生(国立がん研究センター東病院先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)
医療・ケアを提供する人々は、しばしば倫理的問題につきあたる。複数の選択肢の中で、どのような振る舞いがもっとも望ましいのか、確信がもてなくなったり、関係者のあいだで意見が対立したりすることも稀ならずある。臨床倫理コンサルテーション(clinical ethics consultation: CEC)は、こうした倫理的問題の解決を支援する活動として発展した。2012年の病院機能評価では「患者・家族の倫理的課題等を把握し、誠実に対応している」ことが項目として追加され、その評価ポイントとして「臨床の様々な場面で生じる個別具体的な倫理的課題について、実際の対応状況を評価する」が挙げられている。「Do Not Attempt Resuscitation(DNAR)指示のあり方についての勧告(日本集中医療学会2016年)」「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(厚生労働省2018年)」などの各種ガイドラインでも、当該患者の医療チームで解決できない倫理的課題について、CECなどの組織での検討及び助言が勧められている。また、「がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針(厚生労働省2022年)」では、臨床倫理的、社会的な問題を解決するための、具体的な事例に則した、患者支援の充実や多職種間の連携強化を目的とした院内全体の多職種によるカンファレンスの開催が求められている。医療現場において、個別の事例の倫理的課題への対応、それを支援する組織としてのCECの重要性は増している。CECで扱われる代表的な倫理的課題としては、①患者の意向と医療・ケア従事者の意向が対立する場合、②患者が意思決定できない/できるかどうか疑わしい場合、③家族の意向と医療・ケア従事者の意向が対立する場合、④医療・ケアチームのメンバー間で意見が対立する場合、⑤患者と医療・ケアスタッフの合意内容が社会通念や法律と抵触する懸念がある場合、などが挙げられる。CECでは、基本的には、多様なバックグランドを持ったメンバーによる対話(多職種カンファレンス)が重視される。臨床現場での需要の高まりを受けて、CECチームの一員として活動している精神科医が増加している。CECチームならずとも、患者の意思決定能力の評価や意思決定プロセスについて、精神科医が意見を求められる機会が増えている。そこで、CECにおける精神科医の役割についての理解を深めるシンポジウムを企画した。シンポジストの稲葉一人氏にはCECの歴史的背景、総論的内容、小川朝生氏にはCECの長として自施設の活動、戸田裕之はCECのメンバーとしての自施設の活動、寺田整司氏には認知症ケアに関する倫理的な教育・啓発について、最後に西村勝治氏に指定討論者として発言を頂く予定である。各シンポジストは具体的なケースをあげながら解説し、臨床倫理にこれから取り組む精神科医にとっても分かりやすいシンポジウムとしたい。
○小川 朝生1,2 (1.国立がん研究センター東病院先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野, 2.国立研究開発法人国立がん研究センター東病院)
○戸田 裕之 (防衛医科大学校病院精神科学講座)
○寺田 整司1, 近藤 啓子2, 石津 秀樹3, 稲葉 一人4 (1.岡山大学病院, 2.一般財団法人江原積善会積善病院, 3.公益財団法人慈圭会慈圭病院, 4.いなば法律事務所)
○西村 勝治 (東京女子医科大学医学部精神医学講座)