第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム58
精神科臨床の幅を広げるために知っておきたい漢方薬~漢方専門医でなくても上手に漢方薬を使うコツ~

2023年6月23日(金) 13:15 〜 15:15 D会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G303+G304)

司会:神庭 重信(社会医療法人栗山会飯田病院精神科), 堀口 淳(島根大学医学部附属病院)
メインコーディネーター:山田 和男(東北医科薬科大学病院精神科)
サブコーディネーター:久永 明人(医療法人清風会ホスピタル坂東)

本シンポジウムは、日本医学会分科会の1つである一般社団法人日本東洋医学会との合同企画である。一昨年の第117回日本精神神経学会学術総会のシンポジウム89において、現代漢方医学における治療の方法論は、漢方医学的診断である「証」にしたがって治療を進める「随証治療」と、構築されたエビデンスにしたがって現代医薬と同じように薬剤選択を行う「エビデンスに基づく治療(EBM)に準拠した治療」の2つに大別されることと、精神医学における漢方の将来への展望として、「縦のエビデンス」の実践ともいえる随証治療を取り入れることの重要性を提唱した。本来であれば、随証治療を行うさいには、漢方医学の専門知識を十分に持ち、漢方診療の経験を積む必要がある。しかし一方で、漢方方剤の中には、ある一定の条件さえ満たしていれば、現代精神医学的視点(例えば精神症候や身体症候)から「証」を推定することができ、漢方専門医が処方するのと同様に処方できるものがいくつかある。昨年の第118回日本精神神経学会学術総会のシンポジウム75において、真武湯、苓桂朮甘湯、甘麦大棗湯、竹温胆湯、麻子仁丸の5つの漢方方剤における随証治療について議論した。今回、企画するシンポジウムにおいては、随証治療の実践の一環として、精神科日常臨床において利用価値が高く、なおかつ漢方医学に精通していない精神科医であっても処方しやすいと考えられる5つの漢方方剤を、精神医学と漢方医学の双方の知識と経験を十分に持ち合わせた、精神科専門医と漢方専門医を兼ねた5名のシンポジストに議論していただく。シンポジストは、山寺博史先生(やまでらクリニック)、高橋晶先生(筑波大学)、小野真吾先生(ななほしクリニック)、井口博登先生(神経科浜松病院)、辰巳礼奈先生(こころと眠りのクリニック成増)の5名である。座長は、精神神経医学と漢方医学の双方に造詣が深い神庭重信先生(日本うつ病センター)と堀口淳先生(島根大学)にお願いしている。取り上げる漢方方剤は、酸棗仁湯(さんそうにんとう)、柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、女神散(にょしんさん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)である。これらの5つの漢方方剤は、一般の精神科医には必ずしもなじみがないかもしれないが、精神疾患の治療や精神症状のコントロールなどにおいて、日常臨床で意外に使い勝手がよく、安全性も比較的高いものが多い。これらの漢方方剤を上手に使うコツや鑑別処方などについて、各シンポジストの先生方がそれぞれ概説した後に、コーディネーター2名による指定討論、シンポジストとコーディネーターに座長を加えた9名による総合討論、さらには会場の参加者を交えて、精神科領域においてさらに漢方治療を有効に行うためにできることについてのディスカッションを予定している。