○池澤 聰 (東京大学大学院総合文化研究科ギフテッド創成寄付講座)
Session information
シンポジウム
シンポジウム59
ギフテッドの特徴を有する子どもたちの実態と支援
Fri. Jun 23, 2023 1:15 PM - 3:15 PM E会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G301+G302)
司会:樋口 輝彦(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター/日本うつ病センター), 池澤 聰(東京大学大学院総合文化研究科ギフテッド創成寄付講座)
メインコーディネーター:池澤 聰(東京大学大学院総合文化研究科ギフテッド創成寄付講座)
サブコーディネーター:樋口 輝彦(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター/日本うつ病センター), 熊崎 博一(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科未来メンタルヘルス学分野)
「1つまたは複数の領域において、同じ年齢、経験、環境の人と比べて、より高い水準の能力を発揮している、または発揮する能力を持つ(定義:National Association for Gifted Children)」といったギフテッドの特徴を持つ人の支援と育成は、本邦では必ずしも進んでいない。ギフテッドを有する方は、知性、創造性、芸術、リーダシップ、あるいは特定の学術分野において高い潜在能力を持つとされ、全人口の約2~6%程度が対象となると想定されている。
ギフテッドを有する方は、その高い認知特性のため、教育において、彼らを刺激する環境が必要となる。彼らの高い学習意欲と創造力を発揮できる豊かな環境を整えることで、独自の成果を生み出すことが期待される。逆に、学校での授業が簡単すぎて退屈に感じられることが一因で、授業態度が悪かったり、成績もそこまで良くないことがある。高い潜在能力を発揮できず、様々な場面で「出る杭は打たれる」体験をし、多大な心理社会的機能上の問題を認める。
これらの背景の一つには、彼らが“Overexcitability(過度激動・過興奮性)” という様々な感覚的情報を大量に取り込み、そこに強く反応する特徴も併せ持つことが挙げられる。この特徴のため、周囲の様々な刺激を繊細かつ激しく感じ、それらに対して激しく反応してしまう。飽くなき好奇心、想像力が豊か、異常に強い意志も示すこうした特徴は、一方で社会的・情緒的には問題行動・逸脱行動と判断され、家族・友人といった周りの人々から孤立する原因となる。
また、ギフテッドを有する方の能力は必ずしも全領域で押し並べて高いというわけではなく、“非同期発達”と呼ばれる個人内における能力領域間のバラツキを有する。海外の調査によれば、個人内の認知機能下位領域間におけるバラツキの大きさは、一般健常者よりもギフテッドを有する方の方が顕著であり、バラツキの大きさは情動制御の悪さや不安・緊張特性の強さとも関連が強いことが指摘されている。
上記のような背景で、日常生活への不適応、不安を訴え、児童精神科外来を受診するケースが近年日本でも急速に増加している。ギフテッドを有する人々が、以上のような困難に直面し、医療機関に受診した場合、自閉症スペクトラム障害や注意欠陥多動性障害をはじめとした発達障害と診断されることも少なくない。一方で、ギフテッドを有する方の支援は従来の発達障害者の支援とは大きく異なることが推定され、ギフテッドを有する方への支援確率は喫緊の課題となっている。そこで、本シンポジウムでは、①ギフテッドを有する方の心理社会的特徴についての最新の研究報告、②ギフテッド専門外来におけるニーズとギフテッドの実態、③成人期におけるギフテッドと発達障害臨床の現状、④最新のテクノロジーを用いたギフテッドを有する方への支援について紹介する。
さらに、シンポジウムにおける学会参加者を含めた議論を通じて、ギフテッドの特徴を持つ当事者への、今後に期待される支援の在り方や研究開発の方向性などを検討する。
○宮尾 益知 (どんぐり発達クリニック)
○太田 晴久1,2, 中村 善文2, 西尾 祟志2, 中村 暖2, 岩見 有里子2, 長塚 雄大2, 鈴木 洋久2, 中村 元昭1,2, 沖村 宰1,2, 岩波 明2, 加藤 進昌3 (1.昭和大学発達障害医療研究所, 2.昭和大学附属烏山病院, 3.小石川東京病院)
○熊崎 博一 (長崎大学大学院医歯薬学総合研究科未来メンタルヘルス学分野)
○山末 英典 (独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター)