○玉田 有 (東京医科大学八王子医療センターメンタルヘルス科)
セッション情報
シンポジウム
シンポジウム60
精神医学におけるconceptual historyの重要性-統合失調症、自閉、両価性
2023年6月23日(金) 13:15 〜 15:15 G会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G314+G315)
司会:古茶 大樹(聖マリアンナ医科大学神経精神科学教室)
メインコーディネーター:井上 猛(東京医科大学精神医学分野/東京医科大学病院メンタルヘルス科)
精神医学における症状や診断は、出血や癌のように実体を指すものではなく、構成概念である。そのため、同じ術語でも時代や場所によって、その内包が異なることがしばしばある。ひとつの術語が生まれた理論的背景と、現代に至る変化を知ることで、その概念を深く理解し、目の前の患者を多面的に把握することができるようになる。20世紀初頭に、オイゲン・ブロイラーは「統合失調症」や「自閉」、「両価性」など、現在でも使われている多くの精神医学用語を造語した。しかしこれらの概念の内包は、現代において、ことごとく変化している。ブロイラーは当初、精神分析学の影響を受けて「統合失調症」概念を作り上げ、連合弛緩や感情面の特徴を重視したが、現代では診断の信頼性を担保するために、幻覚妄想に重点が置かれるようになった。また、当初は統合失調症の基本症状とされた「自閉」についても、現代では統合失調症ではなく、発達障害をあらわす術語になっている。同じく統合失調症の基本症状であった「両価性」は、フロイトによって感情面の両価性が重視され、力動精神医学の領域で重要な概念とされるようになった。本シンポジウムの目的は、ブロイラーが造語した3つの術語に焦点を絞り、その内包の変遷を辿ることで概念の理解を深めることである。玉田は、精神医学における概念史研究の重要性と、ブロイラーが統合失調症概念を作り上げた時代的・理論的背景について総論的事項を述べる。大前先生には「統合失調症」、佐々木先生には「自閉」を論じていただき、池田先生には力動精神医学の立場から「両価性」について論じていただく予定である。
○池田 暁史 (大正大学心理社会学部臨床心理学科)
○佐々木 雅明1,2 (1.虎の門病院分院, 2.聖マリアンナ医科大学病院)
○大前 晋 (国家公務員共済組合連合会虎の門病院精神科)