○小山田 静枝1, 川西 智也2 (1.昭和大学保健医療学部, 2.鳴門教育大学大学院)
セッション情報
シンポジウム
シンポジウム66
高齢者犯罪の現状と司法精神医学的課題
2023年6月23日(金) 15:30 〜 17:30 B会場 (パシフィコ横浜ノース 1F G5)
司会:五十嵐 禎人(千葉大学社会精神保健教育研究センター法システム研究部門), 田口 寿子(神奈川県立精神医療センター)
メインコーディネーター:田口 寿子(神奈川県立精神医療センター)
サブコーディネーター:村松 太郎(慶應義塾大学医学部精神神経科)
わが国では、2020年10月時点で総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は29%と世界で最も高く、しかも75歳以上の後期高齢者の割合が15%を占めるなど、超高齢化が進む一方である。それに伴って高齢者による犯罪も増え、2021年の犯罪白書によれば、検挙人員に占める高齢者率は年々上昇しており、2020年には23%(女性では34%)にのぼる。また検挙された高齢者の75%(女性では82%)は70歳以上で、罪名は窃盗の割合が高く、特に女性では90.5%が窃盗、うち万引きが73%と顕著に高率となっている。矯正施設の入所受刑者の高齢化率も同様で、2020年には13%(女性では19%)と、過去20年間で9ポイント(女性では15ポイント)も上昇している。
高齢者が犯罪に至る背景要因として、心身の衰え、経済的困窮、孤独、老々介護といった高齢化に伴う生活上のさまざまな困難がある。認知症など精神障害が影響していることも少なくなく、刑事精神鑑定に付される事例が増えているが、高齢者や認知症者の責任能力判断についてはまだ十分な議論がなされていない。また、矯正施設においては、心身ともに機能低下が進む高齢者に対する刑罰や処遇をどうするかが喫緊の課題となっている。
本シンポジウムでは、超高齢化社会がもたらしている司法精神医学領域の問題をいくつか取り上げて議論したいと考えている。小山田が矯正施設における高齢受刑者の処遇の現状と課題について、大町が重大な他害行為を行った高齢者の医療観察制度下での治療について、村松が高齢者の精神鑑定や認知症者の刑事責任能力・訴訟能力をめぐる問題について、田口が加害者・被害者ともに高齢者という事例の多い介護殺人の現状および特徴について講演し、最後に五十嵐が司法精神医学的観点から見た高齢者犯罪について包括的な指定発言をする予定である。
○大町 佳永 (国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院精神診療部)
○村松 太郎 (慶應義塾大学病院)
○田口 寿子 (神奈川県立精神医療センター)
○五十嵐 禎人 (千葉大学社会精神保健教育研究センター法システム研究部門)