第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム68
さまざまな精神科領域における身体症状症-専門的知見に基づく検討

2023年6月23日(金) 15:30 〜 17:30 D会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G303+G304)

司会:富永 敏行(京都府立医科大学大学院医学系研究科精神機能病態学)
メインコーディネーター:富永 敏行(京都府立医科大学大学院医学系研究科精神機能病態学)
サブコーディネーター:名越 泰秀(京都第一赤十字病院精神科(心療内科))

申請者らは,これまで本総会のシンポジウムにおいて身体症状症(SSD)に関して議論を重ね,毎回,多くの会員から好評をいただいた。
第118回総会のシンポジウムでは,その難治例への方略として,個別性を踏まえた治療の必要性について議論した。その結果,SSDの個別性を検討する上で,さまざまな精神科の領域においてSSDが存在することの認識,各々の領域における特徴の理解や対応の工夫の必要性の重要性を認識した。
そこで,今回,我々はさまざまな精神科領域におけるSSDについて議論することを考えた。具体的には,4つの代表的な領域,すなわち,児童・青年期,老年期,緩和ケア・サイコオンコロジー,依存・嗜癖の領域を選択した。
児童・青年期では,頭痛や腹痛を訴えるSSDの症例は珍しくない。神経発達症では,その特性を踏まえて診療にあたる必要がある。何らかの葛藤による身体化への介入は,一般の精神科医には容易くはない。
高齢者では,うつ病で心気的訴えが前面に出ることが特徴とされるが,SSDとの鑑別を誤ると予後に重大な問題が生じる。また,認知症をはじめとする認知機能低下もSSDの症状形成や治療に大きな影響を与える。
緩和ケア・サイコオンコロジーの領域では,身体症状の訴えが身体疾患では説明がつかず,SSDの併存が考えられる症例があり,近年注目されている。その鑑別は容易ではないが,SSDとして診療することが患者のQOLの向上に重要な場合もある。
依存・嗜癖の領域も,SSDとの関わりは強い。SSDの患者はベンゾジアゼピン(BZD)系薬剤に依存してしまい,減薬が進まず,治療が長期化する場合が多い。BZDの離脱症状の訴えの中には身体症状症によるものもあるだろう。
では,具体的には,各領域の専門家はどのようにSSDを診ているのだろうか。SSDの診療のヒントにつながるこのような疑問に答えてくれる登壇者は,児童青年期精神医学から青年期への精神療法とともに神経発達症を専門とされている山下達久先生,老年期精神医学からSSDと認知機能に関する論文を多数執筆されている稲村圭亮先生,緩和ケア・サイコオンコロジーの領域からがん患者の精神症状のケアなどの最先端の研究に従事され,慢性疼痛の治療に関する活動も活発に行われている明智龍男先生,嗜癖・依存の領域から長らく臨床と研究に従事され,我が国きっての論客である松本俊彦先生の4人である。指定討論として身体症状症を専門とする名越泰秀が,各領域を跨いだ視点で登壇者やフロアと議論を深める。
各領域の専門家が一同に集まり,各々の領域のSSDの特徴,病態理解,対応に関する議論を交わすことは,希有な機会であり,SSDに興味を持ちこれから診療しようと思っている精神科医はもちろん,SSDの治療に難渋している精神科医,さらには各領域の専門家にとっても,知識を増やし診療のコツをつかむ貴重な時間となるだろう。