JSPN119

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シンポジウム

シンポジウム76
精神疾患レジストリの現況報告

Fri. Jun 23, 2023 3:30 PM - 5:30 PM P会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G416+G417)

司会:神庭 重信(社会医療法人栗山会飯田病院精神科), 久住 一郎(北海道大学大学院医学研究院精神医学教室)
メインコーディネーター:中込 和幸(国立精神・神経医療研究センター理事)
サブコーディネーター:尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科精神疾患病態解明学)

 精神疾患レジストリとは、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)が日本精神神経学会と協働して、日本精神科病院協会、日本精神神経科診療所協会の支援を受け、当事者団体や企業とも連携しながら、2018年度から日本医療研究開発機構の支援を受けて構築されてきたコホート・レジストリである。精神科領域では臨床診断の妥当性や信頼性は低いことが爾来より指摘されてきた。特定の診断カテゴリーには、多様な病態が混在しているため、既存の診断基準に基づく精神疾患の病因・病態解明は困難を窮める。したがって、精神疾患レジストリでは、診断カテゴリーを超え、特定の神経回路に基づく機能ドメインを中心に据えた研究手法への転換を見据えて収集項目の選択を行っている。また、幅広い診断カテゴリーにまたがる機能ドメインの生物学的病態を明らかにするためには、大規模な患者レジストリによる研究基盤を構築する必要がある。サンプル数を十分に確保するために、医療機関の機能に基づく実施可能性に配慮し、患者情報を3層に分け、第1層(人口統計学的情報等基本的な臨床情報)については可能な限り悉皆的に収集し、その上で可能な場合に第2層(機能ドメインを反映する臨床評価を含む情報)、第3層生体情報(血液、髄液、脳神経画像、iPS細胞、ヒト脳組織)を収集する方法を採用している。縦断的なフォローアップについては、転院しても追跡可能なように、スマホのePRO(electronic patient-reported outcome)を活用して患者に直接アクセスし、不安、気分、睡眠、社会機能、主観的QOL、薬物等の情報を入力する。レジストリの構造や内容等、バイオマーカーが明らかな他の疾患領域とは異なり、まずは病態に基づく精神疾患の層別化を実現する必要がある。そのために、収集すべき情報は多く、必要なサンプル数も多く、しかも長期間のフォローアップを要する。
 2021年度からは日本医療研究開発機構の新たな課題「精神疾患レジストリの利活用による治療効果、転帰予測、新たな層別化に関する研究」に採択され、引き続き対象者のエントリーを進めながらも利活用研究の準備も進められている。この間、研究参画機関も増えてきているが、本シンポジウムでは精神疾患レジストリの概要を紹介するとともに、2021年度の当初より利活用研究の準備を進めてきた7機関における利活用研究の進捗状況を報告する。聴衆の方々には精神疾患レジストリの意義を感じていただき、本レジストリの推進協議会に入会し(費用はかからない)、レジストリへの患者さんの登録や利活用研究に参画していただくことを期待している。