第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム78
COVID-19後遺症を含めた新しい形の認知機能障害とその援助

2023年6月23日(金) 15:45 〜 17:45 R会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G420)

司会:谷向 仁(京都大学医学部附属病院), 小川 朝生(国立がん研究センター東病院先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)
メインコーディネーター:大谷 恭平(地方独立行政法人加古川市民病院機構加古川中央市民病院精神神経科)

 認知機能障害は脳細胞死や機能低下より記憶力や判断力などが低下し社会生活や対人関係に支障がでていることをいう。軽度認知障害は約400万人いると推定されており5人に1人が認知症に移行するといわれているため、アルツハイマー型認知症をはじめ認知症の前駆段階と捉えられていたが、さまざまな契機から認知機能障害が起こることがわかってきた。
 せん妄は長らく可逆的な認知機能の変動と捉えられてきたが、認知症発症の独立した危険因子であり、認知症におけるせん妄は基礎的な認知機能低下の軌跡を加速する可能性が示されている。COVID-19は、せん妄の合併率が高く、サイトカインストームなどウイルスへの炎症反応からインターロイキンが炎症下流で発生し、認知機能に影響を及ぼしていることがわかってきた。イギリスのブレインバンクのデータからはCOVID-19罹患後の脳の萎縮が判明しており認知機能障害と関連が示唆されている。COVID-19の死後脳研究では、アルツハイマー病患者に見られるような変化がCOVID-19患者の脳にも見られることが示されている。がん治療における認知機能障害は様々なものがあるが、化学療法によるケモブレイン、放射線療法によるラディエーションブレインが知られている。化学療法・放射線療法中および化学療法・放射線療法後に癌患者に発生する思考および記憶の問題を指し、がんサバイバーの日常生活に支障をきたす問題として扱われている。化学療法前や化学療法中に身体活動量を高く維持できれば認知機能低下を防ぐことができるといった研究もあり、運動療法やリハビリテーションに注目が集まっている。
 これらの認知機能障害に焦点をあて、その特徴や共通点、対処方法などを議論していく。