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シンポジウム

シンポジウム8
気分障害の睡眠 up-to-date -病態理解から診断・治療法開発へ-

Thu. Jun 22, 2023 10:45 AM - 12:45 PM A会場 (パシフィコ横浜ノース 1F G7+G8)

司会:栗山 健一(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター), 鈴木 正泰(日本大学医学部精神医学系)
メインコーディネーター:鈴木 正泰(日本大学医学部精神医学系)
サブコーディネーター:栗山 健一(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)

オンデマンド配信対象外

 うつ病や双極性障害などの気分障害においては高率に睡眠の問題が生じる。特にうつ病においては、8割以上の患者で不眠を認め、併存不眠症はQOLの低下、自殺リスクの上昇、抑うつ症状の遷延化などと関連することが報告されている。積極的な不眠への介入は抑うつ症状の改善にも促進的に働くことが示されており、うつ病診療において不眠は重要な症候と考えられる。
 以前よりうつ病では、レム睡眠圧の上昇を特徴的に認めることが知られている。近年、基礎研究においてはレム睡眠の増加がストレスに対処するための生理的応答である可能性が示唆されており、ストレスが発症契機となるうつ病の病態においてレム睡眠がどのような役割をもつのか考える上で興味深い。これら最新の基礎研究の知見とこれまでの臨床研究の知見を統合的に理解することができれば、うつ病の病態理解は一層深化するものと考えられる。
 最近になり、気分障害では、睡眠制御にも重要な役割を担う概日リズムの異常を認め、これが病態、治療経過に密接に関わることが明らかにされつつある。それに伴い、生体リズム操作による気分障害治療が再評価されており、国際感情障害学会(ISAD)や国際双極性障害学会(ISBD)においては、時間生物学的治療に関する委員会やタスクフォースが立ち上げられ、薬物療法を補完する新たな治療戦略として実地臨床における使用を目指した議論が進められている。
 うつ病において不眠は、初期症状ないし前駆症状として出現することから、早期発見・早期治療に繋げるための症候としても注目される。前述のようにうつ病では特徴的な睡眠異常を認めることから、これを診断バイオマーカーとして利用することが考えられてきた。近年、自宅にて簡便に睡眠脳波を計測できるデバイスやその自動解析システムが登場し、これを用いたプライマリケアでの使用を想定した診断補助システムの開発が国内で進められている。
 本シンポジウムでは、気鋭の睡眠研究者から第一線の現場で活躍する臨床医まで幅広いシンポジストにご登壇いただき、睡眠の視点から気分障害を考える。基礎・臨床研究の最新知見の共有を通して病態理解を深めるとともに、睡眠に着目した新たな診断・治療法開発の可能性について議論する。

シンポジストとテーマ
鈴木正泰(日本大学精神科) 気分障害と睡眠の関連 -臨床・疫学研究のoverview-
林 悠(東京大学大学院理学系研究科) ストレス抵抗性とレム睡眠
木村昌由美(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構)うつ病の睡眠脳波バイオマーカーの可能性:これまでの検討
吉池卓也(国立精神・神経医療研究センター)気分障害の治療ターゲットとしての睡眠・概日リズム異常
西村勝治(女子医科大学精神科)睡眠に着目した気分障害診療:リエゾン精神医学の視点から