○松﨑 尊信 (国立病院機構久里浜医療センター精神科)
セッション情報
シンポジウム
シンポジウム81
ゲーム障害の予防・治療について
2023年6月24日(土) 08:30 〜 10:30 D会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G303+G304)
司会:樋口 進(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター精神科), 松﨑 尊信(国立病院機構久里浜医療センター精神科)
メインコーディネーター:松﨑 尊信(国立病院機構久里浜医療センター精神科)
サブコーディネーター:樋口 進(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター精神科)
2000年以降のインターネットの普及に伴い、インターネットやゲームをやめられず日常生活に支障をきたす症例が世界で多数報告されるようになった。このような状況を踏まえ、2019年5月世界保健機関(WHO)は、新たな診断基準ICD-11において、インターネットコンテンツのうち、「ゲーム障害」を精神疾患のひとつとして分類した。これを契機として、ゲーム障害は精神医学分野において理解が少しずつ進みつつあるが、まだ新しい疾病概念であるため、標準的な治療法が確立しているとはいえない。しかし、現実に治療を求める患者(特に若い世代)は世界で多数存在しており、予防・治療の開発が喫緊の課題となっている。国立病院機構久里浜医療センターは、2011年7月よりネット依存治療研究部門を立ち上げ、これまで全国から多数の患者を受け入れながら、外来診療、個人カウンセリング、デイケア、家族会、入院治療と、患者や家族のニーズに合わせて専門診療の幅を広げてきた。本シンポジウムでは、以下のテーマについて報告する。1. ゲーム障害の診断・臨床的特徴や海外事例について総括し、予防・治療において留意すべきポイントについて概説する。2. 物質依存や行動嗜癖で応用されている認知行動療法(CBT)について、テキストベースでの新たなプログラムを開発し、久里浜医療センターの外来患者に実施した。このCBTの治療効果について報告する。また、2014年から毎夏、国立青少年教育振興機構と久里浜医療センター共催の治療キャンプを開催しており、この活動についても紹介する。3. ゲーム障害の患者層は、疫学調査において、若年男性、とくに小中高生が対象となることが多い。これを踏まえ、学校教育におけるゲーム障害の予防・啓発活動について紹介するとともに、子どもたちのゲーム使用のルール作りについて考える。4. ゲーム障害の問題が生じた時に、どこに相談にいけば良いかわからない、あるいは受診しようとしても受診できる医療機関が少ない、予約が取れない、精神科を受診するにはハードルが高い、などの意見を聞くことがある。そのような場合、親と子どもの両方をフォローする小児科は、ゲーム障害の対応機関の選択肢となりうる。小児科におけるゲーム障害の位置づけ、予防・啓発活動等について紹介する。5. ひきこもりは現在の社会的問題と位置づけられつつあるが、背景や抱える問題についてゲーム障害との共通点が驚くほど多い。サイコセラピーなどひきこもりに対する予防・治療介入について事例を交えて紹介するとともに、ゲーム障害への応用について検討する。シンポジストより、これらのテーマについて問題提起を行い、参加者と今後の予防・治療の方向性について議論したい。
○三原 聡子 (独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター心理療法士室)
○中山 秀紀 (北仁会旭山病院)
○井上 建 (獨協医科大学埼玉医療センター子どものこころ診療センター)
○加藤 隆弘 (九州大学大学院医学研究院精神病態医学)
○樋口 進 (独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター精神科)