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シンポジウム

シンポジウム82
不安症、物質使用症、摂食障害を支持的精神療法で治療するには、何が必要か?

Sat. Jun 24, 2023 8:30 AM - 10:30 AM E会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G301+G302)

司会:宮岡 等(北里大学医学部精神科), 山下 達久(からすま五条・やましたクリニック精神科)
メインコーディネーター:永田 利彦(壱燈会なんば・ながたメンタルクリニック)
サブコーディネーター:宮岡 等(北里大学医学部精神科)

支持的精神療法は、本格的な人格・パーソナリティの成長や、考え方の変革を求めず、その人の資質を十分に生かし、適応力を高めることを支援することとされ、精神科医にとって習得が必須な基本的技術の1つとされる。そして、実際に行われている精神療法のほとんどが支持的-表出的(分析的)精神療法や支持的-認知行動療法であると言われている(Winston A et al. Learning Supportive Psychotherapy, 2019)。カウンセリングは支持的精神療法より一段階、低く分類されており(上記、Winston A et al.2019)、十分に傾聴をして、共感を示すことにだけでは、長時間が必要な割に、その効果は限局的である。そこで、励まし、保証、教育、アドバイスといった支持的精神療法の技法とプラスアルファが必要となる。また、専門医になるのにあたって不安症、物質使用症、摂食障害、パーソナリティ症の経験が不可欠とされているが、それらの治療において、共感を示すといった消極的な姿勢では、なかなか治療はおぼつかない。その点、支持的精神療法は病因論を含まないからこそ(atheoretical)、認知行動療法、表出的精神療法などの種々の治療技法を付加可能である。
不安症で最もエビデンスを有する治療である認知行動療法では、背景にある中核的信念や、ある状況下において生じる信念、自動思考を認知再構成などによって改善に導くが、行動を少しずつ変えるようなアドバイス、保証、励ましがスモールステップであっても効果を発揮していく。また動機づけ面接も有効である。
物質使用症では、まず、どう治療を継続させるかが課題である。そこで孤独の病であることの教育的アプローチと治ることの保証が重要となる。また「底つき」に代わる介入方法として動機づけ面接が用いられる。
摂食障害ではanorexic debate(やせ症ディベート)に取り込まれず、どう治療的な関係を築くかが課題であり、精神分析的やメンタライゼーションに基づく治療の観点からnot knowing stance(無知の姿勢)の治療姿勢や、最初の出会いからどうvalidation(承認、認証、有効化)するかが重要となる。
本シンポジウムでは認知行動療法家から精神分析家まで、不安症から孤独の病(物質使用症)、摂食障害までの専門家が一堂に会して支持的精神療法を考える。
本シンポジウムは、宮岡等先生の代議員提案です。司会:宮岡等先生、山下達久先生、シンポジスト:原井宏明先生(不安症治療にどう認知行動療法や動機付け面接を取り入れるのか)、松本俊彦先生(孤独の病としての物質使用症をどう疾患説明するのか)、崔炯仁先生(摂食障害やパーソナリティ症治療におけるnot knowing stance、無知の姿勢)、永田利彦(摂食障害治療におけるvalidationの超純粋性)