○豊見山 泰史 (九州大学病院)
セッション情報
シンポジウム
シンポジウム92
強迫症の理解と治療戦略のアップデート
2023年6月24日(土) 10:45 〜 12:45 D会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G303+G304)
司会:中尾 智博(九州大学大学院医学研究院精神病態医学), 金生 由紀子(東京大学大学院医学系研究科こころの発達医学分野)
メインコーディネーター:中尾 智博(九州大学大学院医学研究院精神病態医学)
サブコーディネーター:豊見山 泰史(九州大学病院精神科医局)
DSM-5およびICD-11において、強迫症(Obsessive-compulsive disorder:OCD)は、それまでの不安症から独立し、「強迫症および関連症群」のカテゴリーの中心疾患として位置づけられ、さらに「チック関連」の特定用語が新たに設定された。これは不安症群とOCDの生物学的基盤や疾患内異種性に基づく臨床症状の差違が明らかになり、不安を中心とした疾患として捉えることの限界が明らかになったためである。不安症群との最大の差違は、不安のみならず「とらわれ」と「繰り返し行為」に関連した病理が存在することにある。従来、強迫神経症と呼ばれていた不安を中心とする典型的なケースだけではなく、「チック関連」に代表される神経発達症の特性が反映され、不安増強プロセスの関与が不明瞭な繰り返し行動が習慣化・儀式化したケースも多く存在することが明らかになっている。
OCDは慢性化しやすく重症化・難治化することが多い疾患と思われがちであるが、適切な治療介入を行うことで症状が大きく改善するケースも多い。そのためには認知行動療法や薬物療法の基本的な治療戦略の理解が重要である。そこで本シンポジウムでは、認知行動療法や薬物療法の最近の知見について議論を深めたい。まず豊見山がOCDの脳神経基盤と基本的な治療戦略の概観を紹介する。そして、金生が「チック関連」OCDの臨床的な特徴やトゥレット症との関連について解説する。次いで、飯倉が、不安が関与し認知的な増悪プロセスを有する典型的なケースを中心に、症状の成り立ちに応じた認知行動療法の工夫について説明する。最後に阿部が薬物療法の最近の知見、特にグルタミン酸系薬剤などの新たな薬剤の臨床応用に向けた展望を紹介する。本シンポジウムを通じて、OCDの病態の包括的な理解が深まり、適切な介入を実施できる治療者が増えることを期待したい。
○金生 由紀子1,2 (1.東京大学大学院医学系研究科こころの発達医学分野, 2.東京大学医学部附属病院こころの発達診療部)
○飯倉 康郎 (医療法人社団宗仁会筑後吉井こころホスピタル)
○阿部 能成 (京都府立医科大学附属病院)
○村山 桂太郞 (九州大学大学院医学研究院精神病態医学)