第119回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

シンポジウム

シンポジウム93
診療科横断・多職種連携による複合介入の開発・検証と実装:サイコオンコロジー領域の研究開発

2023年6月24日(土) 10:45 〜 12:45 G会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G314+G315)

司会:稲垣 正俊(島根大学医学部精神医学講座), 内富 庸介(国立研究開発法人国立がん研究センター)
メインコーディネーター:稲垣 正俊(島根大学医学部精神医学講座)

精神科領域における精神障害や健康損失の背景は、個人レベルだけでも多くの要因が関わっており、それらが複雑に絡み合った状態にある。さらに、個人レベルだけでなく、医療者レベル、組織レベルそれぞれにおいても多くの要因が関わり、更に複雑な背景となる。コンサルテーション・リエゾン領域においては、精神科領域にとどまらず、診療科横断的にチームを組む必要があり、この複雑な背景に対する介入法もまた、他要因で複雑なものとならざるをえない。
多要因・多レベルに同時に介入する方法を開発するためには、まずは、介入可能な要因を明らかとし、一つの要因だけではなく一連の要因に対する複合的な介入を行う必要がある。この複合的な介入を、実臨床で実施可能なものとし、更には、通常臨床でもその介入の質が担保されることを意識した介入法を開発することが前提となる。
この複雑な介入法の効果の検証方法も複雑なものとなり、個人レベルでの効果と副作用の検証だけでなく、医療者レベル、組織レベルでの効果と副作用の検証や、実施可能性、介入の受容性などの質的な検討も必要となる。
介入法を開発する段階で、その介入法がどのように実臨床に実装され、広く利用可能なものとなるかという出口戦略も、あらかじめ検討しておく必要もある。そのためには、開発・検証の早い段階から、患者や家族を含めた関連するステークホルダーの意見を聴取し、調整しておく必要があろう。
本シンポジウムでは精神科領域に留まらない診療科横断的なチーム医療を必要とするリエゾン・コンサルテーション領域の中でも致死的な疾患でもあり、患者にとって悪い知らせや苦痛が疾患の長い経過の中で度々生じるサイコオンコロジー(精神腫瘍学)の事例を取り上げ、議論してく。多因子・多レベルの要因が関連する複雑な介入の開発と効果検証、実装の先駆的プロセスを紹介し、精神科領域の個人の行動変容から社会システムに関わる複雑な介入法の今後を考える機会としたい。