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シンポジウム

シンポジウム95
精神科が地域医療に貢献できること ~コンサルテーション・リエゾンによって活かされる精神医学の経験

Sat. Jun 24, 2023 10:45 AM - 12:45 PM I会場 (パシフィコ横浜ノース 3F G318+G319)

司会:安田 貴昭(埼玉医科大学総合医療センターメンタルクリニック), 五十嵐 友里(東京家政大学人文学部)
メインコーディネーター:安田 貴昭(埼玉医科大学総合医療センターメンタルクリニック)
サブコーディネーター:五十嵐 友里(東京家政大学人文学部)

地域社会のなかで精神医学の専門家の力がどれほど求められており、それらに精神科医はどう応えていくべきか。本シンポジウムのねらいは、これらについて参加者とともに考えていくことである。
厚生労働省が地域の医療計画の基本として掲げる「5大疾病」に精神疾患が加わったのは2013年度のことであった。これは精神疾患が社会全体で取り組むべき社会的課題として位置づけられたことを意味する。その後も現在に至るまで、自殺、育児放棄や虐待、いじめやハラスメント、介護問題など様々な社会問題の場面で精神疾患やメンタルヘルスに関連する問題が持ち上がり、そこでは精神医学や臨床心理学に関する知識や経験を持つ専門家の積極的なコミットが求められている。
しかし現状ではこれらの要請に精神科が十分に対応しきれていない。例えば、妊産婦の最も多い死亡原因が自殺であることが明らかになっているが、多くの助産師や産科医、地域の保健師らが精神科の十分なバックアップがないなかで困難を感じながら妊産婦のメンタルヘルスを支えている。
このような精神科に対するニーズに対して、我々ひとりひとりの精神科医にできることは何であろうか。それを考える手がかりになるのがコンサルテーション・リエゾン精神医学(以下、リエゾン精神医学)である。リエゾン精神医学は総合病院で発展した精神医学のサブスペシャリティのひとつである。リエゾン精神医学では精神科が単独で患者の精神疾患を治療するだけにとどまらず、内科や外科など精神科以外での診療科において発生する精神医学的・心理学的問題の解決のために、主治医や関連する多様な職種と連携し、協働して介入を行う。これらは総合病院の精神科では一般的になっているが、総合病院での勤務経験が少ない精神科医にとってはあまり馴染みがなく、そのため地域医療の枠組みのなかで実践されている報告は少ない。しかし、リエゾン精神医学は地域医療においても十分に機能しうるものである。地域医療を担っている精神科医のなかには、プライマリケア医との有益で実際的な協働を行っているものの、それが地域におけるリエゾン精神医学の実践として位置づくことが意識されていない場合もある。
本シンポジウムのコーディネーターは総合病院でリエゾン精神医学を実践してきた精神科医と公認心理師であり、シンポジウムではそれぞれの立場から地域医療で発揮されるべき精神科のポテンシャルについて述べる。また、地域医療を担っているプライマリケア医、精神科医、訪問診療医らが登壇し、地域のメンタルヘルスに関わってきた経験や他職種との連携の実際について報告する。さらに、指定討論者として日本総合病院精神医学会の理事長が登壇し、リエゾン精神医学の視点から地域における連携の可能性についてディスカッションを行う。
本シンポジウムに参加することによって、それぞれが培ってきた精神科の経験を地域医療の現場へと結びつける、意義深いシンポジウムになることを期待している。