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シンポジウム

シンポジウム96
災禍での育ち~みちのくこどもコホートから見つめる東日本大震災と新型コロナウイルス感染症パンデミック~

Sat. Jun 24, 2023 10:45 AM - 12:45 PM J会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G403+G404)

司会:桝屋 二郎(東京医科大学精神医学分野), 八木 淳子(岩手医科大学医学部神経精神科学講座/附属病院児童精神科)
メインコーディネーター:桝屋 二郎(東京医科大学精神医学分野)
サブコーディネーター:八木 淳子(岩手医科大学医学部神経精神科学講座/附属病院児童精神科)

2011年の東日本大震災の発生から12年が経過するが、現在でも激甚被災地で甚大な被害のあった地域での影響が認められる。我々は2015年から「みちのくこどもコホート」として縦断的に、東日本大震災後に岩手・宮城・福島の3県の沿岸被災地で生誕した子ども達を対象に、ハイリスクな状態にある子どもやその家庭を把握し、積極的に治療的介入を提供してきた。当初、子ども達の認知発達と母親のメンタルヘルスにおいて、深刻な状況を窺知することが出来た。本研究実施後、特に子ども達の認知発達は良好な改善を認めつつあった中で、コホート調査開始後5年目(東日本大震災後9年目)にあたる2020年に新型コロナウイルス感染症の全国的なパンデミックが発生した。新型コロナウイルス感染症パンデミックでは日本でも学校休校が相次ぎ、いわゆる「ステイホーム」や「ソーシャルディスタンスの確保」が長期化したことによる子ども達への影響が種々の調査研究で指摘されるようになっている。長期化するパンデミックが災害に相当する心理的影響を与えていることも指摘されている。)東日本大震災の被災当時、乳児や幼い子どもだった者も、この十数年の間に個々の精神発達を遂げてきている。背景には、大地震や津波に遭ったという衝撃的な体験にとどまらず、愛着対象の死や別離、家や目の前の景色の崩壊を目撃すること、それらに伴う家族の悲しみや苦しみを感じ続けるという体験もある。また、住みなれた地域からの避難による転居・転校を余儀なくされることも少なくなく、発達過程では重要な仲間関係においても予期せぬ別離を経験きてきたし、転居が複数回に及ぶことも稀ではなく、移り住んだ土地に慣れたり慣れなかったりするというように、さまざまな苦難を場合によってはいくつも経験している。その中で生じた新型コロナウイルス感染症のパンデミック、この新たな災禍と呼べる状況で、被災地で育った子どもたちの発達過程や養育者のメンタルヘルスがどのような影響を受けたかを「みちのくこどもコホート」の取り組みのを紹介しつつ、追跡調査の最新の解析結果や支援的取り組みとその知見を報告し、大規模災害の災禍における長期的支援、特に母子支援において重要なポイントや今後の課題について検討する。