JSPN119

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ワークショップ

ワークショップ5
リエゾン精神科医が直面する臨床倫理的課題-生命に関わる身体疾患への治療を拒否する患者へのアプローチ-

Fri. Jun 23, 2023 8:30 AM - 10:10 AM N会場 (パシフィコ横浜ノース 4F G412+G413)

司会:和田 健(広島市立病院機構広島市立広島市民病院精神科), 西村 勝治(東京女子医科大学医学部精神医学講座)
メインコーディネーター:和田 健(広島市立病院機構広島市立広島市民病院精神科)
サブコーディネーター:西村 勝治(東京女子医科大学医学部精神医学講座)

本ワークショップは、日本総合病院精神医学会専門医制度委員会による企画として毎年提案しているものである。これまでにも大変好評であったコンサルテーション・リエゾン・サービスにおける意思決定支援と倫理的問題について、引き続き取り上げる。統合失調症や妄想性障害などの精神疾患患者が身体疾患に罹患した場合、病識の欠如や否認などによって本人の意思決定能力が損なわれ、医学的に必要な治療(例えばがんの根治的手術)を拒否することがある。このような場合、身体疾患に対する医療チームは時間的な猶予がない中で、患者や家族とコミュニケーションを取りながら、治療選択をどのように行うかを決定していかなければならず、患者家族の意向の尊重と医学的必要性、あるいは強制的な医療などとの間で倫理的葛藤が生じるケースも少なくない。リエゾン精神科医には医療チームから問題解決に向けた援助が要請され、その期待はリエゾン精神科医にも強い倫理的葛藤を生じさせる。このような状況でリエゾン精神科医が行うべきは、患者の精神症状の評価治療のみならず、直面している葛藤状況を医療チームと共有し、回避することなく患者家族と向き合うための援助である。リエゾン精神科医は、自分自身の逆転移にも目を向け、医療チームの力動にも配慮しながら話し合いを促進する中で、検討すべきポイントが見えてくる。さらに、医療チームが感じていた不安を明確化するプロセスを経て、最終的に医療チームが進むべき方向性が定まっていく場合が多い。もちろん、医療チームが行った臨床判断が必ずしも正解とは限らないし、唯一の正解も存在しないが、リエゾン精神科医の働きかけにより潜在的であった倫理的葛藤が浮き彫りになり、医療チームが納得感をもって臨床的決断を下すことが可能となる。コンサルテーション・リエゾン・サービスの極意の共有が本ワークショップの目的であり、特にこれからの精神医療の担い手である若手精神科医に、積極的に参加していただきたいと考えている。