第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

委員会企画シンポジウム

委員会企画シンポジウム6
神経性やせ症:発症早期から慢性期までの包括的な精神科治療

2024年6月20日(木) 10:45 〜 12:45 I会場 (札幌コンベンションセンター 2F 204会議室)

司会:永田 利彦(なんばながたメンタルクリニック),西園 マーハ文(明治学院大学心理学部)
メインコーディネーター:永田 利彦(なんばながたメンタルクリニック)
サブコーディネーター:西園 マーハ文(明治学院大学心理学部)

委員会:摂食障害治療に関する特別委員会

摂食障害、特に神経性やせ症は慢性化しやすく、追跡期間10 年以上の研究では73.2% が寛解、8.5% が改善の一方、13.7% が慢性化、9.4% が死亡で、その標準化死亡比は代表的な精神疾患より高い。その結果、重症遷延性神経性やせ症が、特定機能病院精神科に入院要請されることが稀ではない。現実的な解決は、忌避ではなく、精神科医が早期発見・介入から慢性期までの全ての局面の治療に積極的に取り組むことである。それは精神科医療を最大限援用することで可能である。まずは早期に寛解に導くことが課題で、成人期の摂食障害治療者が、児童期の治療にも積極的であることが求められる。早期であっても、神経発達症、不安症、パーソナリティ症などが先行して併存している場合、予後不良となる可能性があるが、それらは、現在、精神科医が主となって治療に取り組んでおり、的確に診立て治療可能である。一般的な治療として定着している支持的精神療法は病因論を含まず、認知行動療法などの種々の治療技法を付加可能である。そして、慢性期にあたっては、公立精神病院合併症病棟などと地域のケアが連携しつつ、息の長い治療が必要である。また神経性やせ症の死は絶望死と言われ、どう絶望から救うかが課題となる。
神経性やせ症は精神疾患の中で最も顕著な脳のボリューム低下、セントラルコヒアランスの弱さなどの問題、精神のみならず体重のコントロールの困難さの素因の関与など、他の精神疾患と類比する生物学的基盤を有する、重篤かつ回復可能な精神疾患であり、精神科医が率先して治療に取り組むべきである。
竹林淳和先生(児童思春期の摂食障害診療)、鈴木一恵先生(地域の砦である公立病院での摂食障害治療~当院多職種チームの取り組み)、中里道子先生(スタンダードな心理療法の実装化に向けて)、三井信幸先生(神経性やせ症からの回復~ 自験例を通した考察)、山田恒先生(神経性やせ症慢性期の絶望死を防ぐ)

鈴木 一恵1, 西園 マーハ文7, 上野 聖晃2, 横田 敬子3, 向畑 順子3, 濱中 恵子4, 浦 明日香5, 中島 篤正6, 水野 雅文2 (1.東京都立松沢病院内科, 2.東京都立松沢病院精神科, 3.東京都立松沢病院栄養科, 4.東京都立松沢病院心理室, 5.東京都立松沢病院薬剤科, 6.東京都立松沢病院看護部, 7.明治学院大学心理学部心理学科)