内田 舞1,2 (1.マサチューセッツ総合病院, 2.ハーバード大学医学部)
セッション情報
オンデマンド配信限定セッション
オンデマンド配信限定セッション10
マイクロアグレッションの理解と克服 その2
:精神医療の向上と共生社会の実現のために
司会:内田 千代子(内田メンタルクリニック関内馬車道),渡辺 雅子(新宿神経クリニック)
メインコーディネーター:内田 千代子(内田メンタルクリニック関内馬車道)
昨年我々は、差別と自覚されていないような、何気ない日常の中での見下しや貶しのような差別的言動―マイクロアグレッションが人々の精神衛生をいかに悪化させるか、精神医療にどのような影響を及ぼすか、そして、共生社会をすすめるにあたってどれほどの障壁になっているかを考えるシンポジウムを行った。日本ではまだ広く浸透していない概念であるマイクロアグレッションとは何かを知ること、それを意識することの重要性を確認し、精神医療の現場における医療者の対応についても検討した。医療者は患者が受けている明らかな差別だけでなく、マイクロアグレッションも理解し、さらに医療者自身のなかにあるマイクロアグレッションへの気づきと治療への影響を認識する必要がある。
昨年のセッションでは、米国精神科臨床医がアメリカで近年起きたブラックライブズマターやMe too 運動などについて振り返り、コロナ禍での日本女性の立場をマイクロアグレッションに注目して検討した。フェミニズム研究者からは、SNS 空間でのジェンダーに関わるマイクロアグレッションについての考察と問題提起がなされ、LGBTQ 当事者・心理学者からは、クリニカルバイアスの危険性についての体験的報告がなされた。精神科臨床医による日常臨床での気づきと対応についての報告もあった。今年度は、ジェンダー関連の内容を深めるとともに、臨床分野でのマイクロアグレッションの認識と対応の実態を知るために行った質問紙調査結果を吟味する。また、精神科救急レベルから社会復帰レベルまで携わる医療者から見た、精神障害者を取り巻くマイクロアグレッションの現状についての考察も予定されている。
精神医療の向上と共生社会の実現のためには、マイクロアグレッションの理解と克服が不可欠である。このシンポジウムその2 が前回に引き続き、前進の一歩となることを確信している。
田中 東子 (東京大学大学院情報学環・学際情報学府)
梅宮 れいか (福島学院大学大学院)
峰村 明里, 成島 健二 (東京都立荏原病院精神科)
内田 千代子 (内田メンタルクリニック関内馬車道)
林 直樹 (西ヶ原病院)