第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

オンデマンド配信限定セッション

オンデマンド配信限定セッション3
措置入院統合失調症の治療に持効性注射製剤は貢献し得るか?

司会:伊豫 雅臣(千葉大学大学院医学研究院精神医学教室),山田 浩樹(昭和大学横浜市北部病院メンタルケアセンター)
メインコーディネーター:小口 芳世(聖マリアンナ医科大学神経精神科教室)
サブコーディネーター:山田 浩樹(昭和大学横浜市北部病院メンタルケアセンター)

措置入院は自傷他害のおそれのある精神障害者に対する我が国独自の行政入院である。2018 年措置入院運用ガイドラインの整備が行われたが、治療に言及した内容は記載されていない。措置入院件数は全国的に減少しており地域差がみられる一方で、頻回の措置入院例は臨床場面でよく遭遇する。措置入院統合失調症患者においては、すでに薬物療法が開始されており、心理社会的治療の併用や行政のサービスの導入等がなされ、以前に比して、措置解除後の支援も手厚く行われている傾向があるが、未だうまく機能していないケースが一定数、見受けられる。その多くは服薬アドヒアランス不良によるものであり、措置入院制度下の薬物療法のあり方として、再自傷他害を防ぐという社会通念上、極めて重要な使命を帯びていることから、切れ目のない投薬が必須となる。抗精神病薬の持効性注射製剤(Long-Acting Injectable antipsychotics; LAI)は服薬ノンアドヒアランスの透明化に寄与できる有用な治療ツールであり、再発・再入院予防効果を数多くのエビデンスが支持している。しかし、強制的医療下でのLAI 使用のエビデンスは限定的である。厚生労働省の研究によると、措置入院下(2016 年6 月から2019 年9 月末)での退院時処方におけるLAI 使用率は9.7% となっているが、実際、ガイドラインの発出以降、措置入院下でのLAI 使用実態や措置入院統合失調症患者にどのような特性があるとLAI が処方されているか等は明らかにされていない。本シンポジウムでは上記の臨床疑問に即した研究案を紹介しつつ、措置入院の現状と課題(薬物療法的視点を含めて)、措置入院統合失調症患者の服薬アドヒアランスの実態、さらに2022 年に日本精神科救急学会より精神科救急医療ガイドラインが発表されたが、その中でのLAI の位置づけを概観し、措置入院統合失調症患者の治療にLAI が貢献し得るのかをフロアの聴講者と共に考えてみたい。