The 120th Annual Meeting of the Japanese Society of Psychiatry and Neurology

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オンデマンド配信限定セッション

オンデマンド配信限定セッション8
鍼灸の科学的根拠と精神医療との相互連携

司会:中村 元昭(昭和大学発達障害医療研究所),松浦 悠人(東京有明医療大学)
メインコーディネーター:中村 元昭(昭和大学発達障害医療研究所)
サブコーディネーター:松浦 悠人(東京有明医療大学)

鍼灸は有効性の高い補完医療として様々な領域で活用されている。2000 年代に入ると、EBM の普及に伴い、鍼灸治療のランダム化比較試験(RCT)が増加し、高品質なRCT が報告されている。この流れは精神医療の分野、特にうつ病に対する鍼灸でも同様で、鍼灸の有効性を示す RCT が主要な医学雑誌に掲載されている( Xuan Yin, et al. JAMA Netw Open. 2022)。また、最新版の Cochrane review( Smith CA, et al. 2018)においても、抗うつ薬のみと比較して鍼灸を併用することの有効性が示唆されている。さらに、鍼灸の作用機序に関する基礎および臨床的研究も進んでおり、体表への鍼刺激が体性求心性神経を賦活することで生じる様々な生体反応を介して治療効果を発揮する可能性が示されている。このように、精神科薬物療法と鍼灸の併用は、うつ病患者に有益な効果をもたらすことが期待され、その作用機序も徐々に明らかとなっている。しかし、未だ精神科医療との結びつきは限定的である。演者らは、鍼灸師と精神科医との相互的な医療連携が、現在の精神医療の多くの課題を解決策するひとつの方法となり得ると考えている。そこで本シンポジウムでは、鍼灸の科学的根拠を示し、精神科医と鍼灸師が連携することの意義について議論する。初めに鍼灸の総論として世界で用いられる鍼灸の現状や鍼灸臨床の実際を紹介する。次に、体表への鍼灸刺激によって生じる体性-自律神経反射の基礎研究から鍼灸の作用機序を紹介する。その後、精神科領域での鍼灸のエビデンスや機序に関するエビデンスを提示し、精神科医と鍼灸師が連携することの意義ついて見解を述べる。さらに、世界の鍼灸事情や当事者からみた鍼灸の意義などを含めて議論を深め、精神科医療における新たな協力モデル(AP ネットワーク)を提案したい。