田中 惠子1,2, 川村 名子2, 崎村 建司2, 阿部 学2 (1.福島県立医科大学多発性硬化症治療学講座, 2.新潟大学脳研究所モデル動物開発分野)
セッション情報
一般シンポジウム
一般シンポジウム100
自己免疫性脳炎/自己免疫疾患と精神科臨床
2024年6月22日(土) 13:15 〜 15:15 N会場 (札幌市産業振興センター 産業振興棟 2F セミナールームB)
司会:神林 崇(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構/茨城県立こころの医療センター),来住 由樹(地方独立行政法人岡山県精神科医療センター)
メインコーディネーター:神林 崇(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構/茨城県立こころの医療センター)
サブコーディネーター:髙木 学(岡山大学学術研究院医歯薬学域精神神経病態学),来住 由樹(地方独立行政法人岡山県精神科医療センター)
2007 年、Dalmau らは抗体介在性の自己免疫性脳炎である抗NMDAR 脳炎を確立した。これを端緒とし、以降神経免疫学の領域は新規の自己抗体と抗体特異的な神経症候群の発見が相次いだ。この余波は精神科領域にも及び、とくに抗NMDAR 脳炎は発症時著しい精神病症状や気分症状を、病期の進行に伴い悪性緊張病や致死性緊張病様の病態を呈することより着目されることとなった。同脳炎のみならず辺縁系に病変を生じ精神症状やけいれんを認める自己免疫性脳炎の多さより、初発の精神疾患との鑑別・診断における自己免疫性脳炎の重要性は強調され現在に至っている。研究が進み、新規に発見された自己抗体は脳炎(脳症)や脱髄性疾患をはじめとし、てんかん、急速進行性認知症、産褥期精神障害、睡眠障害、運動障害、単純性ヘルペス性脳炎後の脳炎など多種の病態に関わることが判明している。世界精神医学会のPsychoimmunology expert meeting からは、精神疾患患者の中で自己免疫が関連する病態を想定し「自己免疫性精神病」として診断基準を発表しており、本邦でも紹介が始まっている。
しかし臨床の場においては診断の困難さ、治療後も神経症状や精神症状が長期に残存するケースへの対応など難渋する場面は少なくない。更に、施設によっては集約的な検査の難しさ、抗体検査可能な施設が限定的である、検査・治療が保険収載されていない等のハードルがある。また、neuropsychiatric SLE(NPSLE)や橋本脳症をはじめとした自己免疫疾患と精神症状の関係性については広く知られているが、いまだ特異的な診断マーカーはなく、その病態も不明の部分が多い。これらに関しても包括的な知識の整理が必要である。
本シンポジウムを通じ、自己免疫性脳炎に関する基本的な情報、COVID-19 との関連や新規神経自己抗体などの最新の知見、抗体測定法とその差異、抗体診断と新規治療薬への保険収載にむけての動き、精神科領域で特に注目すべき病態など、実臨床にも役立つ情報を共有出来れば幸甚である。
髙木 学1, 酒本 真次2, 岡久 祐子2, 樋之津 健二2, 和田 菜那美3, 河合 弘樹2 (1.岡山大学学術研究院医歯薬学域精神神経病態学, 2.岡山大学病院精神科神経科, 3.岡山大学医歯薬学総合研究科精神神経病態学)
千葉 悠平1,2, 阿部 紀絵1, 服部 早紀1, 伊倉 崇浩1, 斎藤 知之1,7, 勝瀬 大海1, 須田 顕3, 藤城 弘樹4, 高橋 幸利5, 西野 精治6 (1.横浜市立大学医学部精神医学教室, 2.積愛会横浜舞岡病院, 3.横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター精神医療センター, 4.名古屋大学大学院医学系研究科精神医療学, 5.静岡てんかん・神経医療センター, 6.スタンフォード大学医学部精神医学, 7.よりどころメンタルクリニック桜木町)
筒井 幸1,2,3, 大森 佑貴4, 神林 崇5,6, 加藤 倫紀1, 嵯峨 佑史1, 加藤 征夫1, 田中 惠子7 (1.特定医療法人祐愛会加藤病院, 2.平鹿総合病院心療センター, 3.秋田大学大学院医学系研究科医学専攻病態制御医学系精神科学講座, 4.東京都健康長寿医療センター精神科, 5.筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構, 6.茨城県立こころの医療センター, 7.新潟大学脳研究所モデル動物開発分野)