三柴 丈典1,2 (1.近畿大学, 2.日本産業保健法学会)
セッション情報
一般シンポジウム
一般シンポジウム17
精神科医・産業医の意見申述 その方法と倫理
2024年6月20日(木) 13:25 〜 15:25 B会場 (札幌コンベンションセンター 1F 大ホールA)
司会:井原 裕(獨協医科大学埼玉医療センター),岩井 圭司(大阪人間科学大学人間科学部)
メインコーディネーター:井原 裕(獨協医科大学埼玉医療センター)
サブコーディネーター:岩井 圭司(大阪人間科学大学人間科学部)
医師に期待されるのは、診断や治療だけではない。知識と技能に基づいて、個人・組織・社会に対し、専門家意見を述べることも含まれる。精神科医は、日々の診療でも、職場・学校に対して文書(診断書等)で、上長や教諭に対して口頭で、専門家意見を表明する機会は多い。司法精神医学を専門とすれば、精神鑑定を筆頭に、法廷で専門家証人として意見を求められる。
産業医は、その業務の大半が意見申述である。
一方で、精神科医も産業医も、法律家ではないので、法・制度の文脈で発言を求められれば困惑する。「心神喪失・心神耗弱」「弁識能力・制御能力」「後見・保佐・補助」「予見可能性」「就業区分」「症状固定」など、日常診療では使用しない特殊な用語に言及するのには、違和感も覚える。
しかし、法学者の三柴丈典は、医師にとって「実学的な文系科目に関する教育の強化…とくに経営と法律の教育の強化が重要」であるとし、「…昨今創設された健康管理に関する制度では、(厚労省は)事業者への意見の申述を好例として、医師の医学的知識や技能そのものというより、信頼性に基づく説得力を重視している」(日本精神科産業医協会研修会, 2018)と述べ、医師の意見表明を支持している。
本シンポジウムでは、この三柴の意見を端緒に、医師が法・制度に基づいて意見申述することの方法と倫理について議論する。シンポジストは、産業医として「勧告」も含めた意見申述の豊富な経験をもつ神田橋宏治、精神医学証人して民事・刑事両領域に関して法廷で専門家意見を述べてきた岩井圭司および井原裕であり、そこに産業保健領域の実践法学を説いてきた三柴丈典が加わる。このテーマは、法と医という現代社会の二大専門知をハイブリッドすることに関わり、そこには責任が生まれ、権力も発生する。医師としての本分をわきまえつつ、どこまで説明責任を果たせるかが問われるといえる。
井原 裕 (獨協医科大学埼玉医療センター)
神田橋 宏治 (合同会社DB-SeeD)
岩井 圭司1,2 (1.大阪人間科学大学人間科学部医療福祉学科, 2.阪本美佐子メンタルクリニック)