宮田 久嗣1,2,高野 歩3 (1.医療法人社団光生会平川病院, 2.東京慈恵会医科大学精神医学講座, 3.国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部)
セッション情報
一般シンポジウム
一般シンポジウム25
アルコール・薬物使用で問題のある人たちを診るためには:ハームリダクションの理念を取り入れた対応
2024年6月20日(木) 13:25 〜 15:25 P会場 (札幌市産業振興センター 技能訓練棟 3F セミナールーム1)
司会:宮田 久嗣(医療法人社団光生会平川病院/東京慈恵会医科大学精神医学講座),齋藤 利和(社会医療法人博友会平岸病院/札幌医科大学)
メインコーディネーター:宮田 久嗣(医療法人社団光生会平川病院/東京慈恵会医科大学精神医学講座)
サブコーディネーター:齋藤 利和(社会医療法人博友会平岸病院/札幌医科大学)
本シンポジウムは、日本アルコール・アディクション医学会推薦シンポジウムである。ハームリダクション(HR)は、1970年代のヨーロッパでヘロイン乱用者が不潔な注射器を使い回すためHIV 感染症の拡大が問題となった時代に、清潔な注射器を無料で配布した対策で知られている。この事例のように、HR とは、ターゲットとなる有害な事象(ハーム)を特定し、それを起こす行動(リスク)を取り除くことによって、その社会の健康の維持と増進を目指す公衆衛生的な施策である。したがって、医学のように断薬する(依存症を治療する)というような長期的で実現可能性のはっきりとしない目標は立てない。HR では、薬物使用は、減っても、減らなくてもかまわない。今あるハーム(薬物過剰摂取、支援や治療からの脱落など)を回避する対策が選択される。これに対して、医学では、どのように時間がかかろうとも疾病の回復・治癒や、病因の解明を目指す。この点ではHR と医学では考え方が異なる。しかし、HR の人権尊重、人間理解、偏見排除、支援実践などの理念は、依存症治療において、依存にいたる心理的問題の理解、患者の治療選択の意思尊重、断酒・断薬のみではない敷居の低い治療、多様な回復像の許容などの新たな治療の展開として積極的に取り入れるべきものである。そこで、本シンポジウムは、「アルコール・薬物使用で問題のある人たちを日常臨床で診るためには」というテーマで、「HR はどのようなものか」を高野 歩が、「HR から診療に取り入れるべきものは何か」を白坂知彦が、「HR を、具体的に、どこで、どのように診療に活かすのか」をアルコール使用障害治療で湯本洋介が、薬物使用障害治療で成瀬暢也が紹介し、指定発現を太田順一郎が行う。本シンポジウムを通して、アルコール・薬物使用で問題を抱えた症例を、一般臨床で診療するための新たな展開を図りたい。
白坂 知彦 (手稲渓仁会病院精神保健科)
湯本 洋介 (久里浜医療センター)
成瀬 暢也 (埼玉県立精神医療センター)
太田 順一郎 (岡山市こころの健康センター)