第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

一般シンポジウム

一般シンポジウム26
精神医学領域における生成AI (ChatGPTを含む) の活用:業務効率化から自殺予防研究まで

2024年6月20日(木) 15:40 〜 17:40 A会場 (札幌コンベンションセンター 1F 特別会議場)

司会:松井 健太郎(国立精神・神経医療研究センター病院臨床検査部),香田 将英(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科地域医療共育推進オフィス)
メインコーディネーター:松井 健太郎(国立精神・神経医療研究センター病院臨床検査部)
サブコーディネーター:吉田 和生( 慶應義塾大学病院臨床研究推進センター教育研修部門/Molecular Science, Centre for Addiction and Mental Health, Toronto, Canada),香田 将英(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科地域医療共育推進オフィス)

ChatGPTをはじめとする生成AIは、様々な言語の翻訳や解釈、雛形に則った文書作成、プログラミングコードの作成やブラッシュアップ、課題に沿ったアイデアの提案など、様々なタスクに活用可能である。ChatGPT の使用は、文章作成等の業務に要する時間を約40% 短縮させたことが先行研究から示された。生成AI は自身の専門性を拡張しうることから、年齢や業種を問わず、享受できる潜在的ベネフィットは非常に大きい。
われわれは英語論文執筆にあたって非ネイティブの研究者が直面する言語的障壁を、生成AI が解決しうる点について提言し、JAMA 誌にレター論文として発表した(Matsui et al., 2023; doi: 10.1001/jama.2023.10568)。論文執筆における利便性に限らず、研究計画の策定、解析に関する助言等、生成AI が活躍する場面は多岐にわたる。また、研究での活用に加え、臨床や教育におけるユースケースを、「医療者のためのChatGPT」と題した解説書で取りまとめた。「働き方改革」により勤務可能時間は削られる一方、臨床・教育・研究において要求される業務量が増え続けている昨今、ChatGPT を含めた生成AI の活用は福音となる可能性がある。
さらに精神医学領域において、われわれは、①生成AI を用いた模擬面接を介して動機づけ面接の評価/実効性の向上を目指すプロジェクト( So et al., 2023; doi: 10.31234/osf.io/375sq)、②映像に対する生成 AI のレスポンスを元に自殺企図を早期に検知するシステムの開発(現在進行中)など、生成AI を主軸に据えた新奇的研究を実施している。本シンポジウムでは、これらの研究の紹介とともに、精神医学領域におけるChatGPT の具体的かつ実践的な活用法や、将来的な展望についてディスカッションし、参加者の創造性/生産性の向上に寄与することを目標とする。