第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

一般シンポジウム

一般シンポジウム27
市販薬乱用・依存の実態・治療・対策:いま若者たちに何が起きているのか?

2024年6月20日(木) 15:40 〜 17:40 B会場 (札幌コンベンションセンター 1F 大ホールA)

司会:成瀬 暢也(埼玉県立精神医療センター),松本 俊彦(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部)
メインコーディネーター:松本 俊彦(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部)
サブコーディネーター:成瀬 暢也(埼玉県立精神医療センター)

近年、若年者の市販薬乱用が医療現場で大きな問題となっている。全国の精神科医療施設における調査では、十代の薬物乱用・依存患者数が増加しており、しかも患者の7 割弱が市販薬を主たる乱用薬物としている。また、救急医療の現場でもコロナ禍以降、若年女性を中心に市販薬過量摂取による救急搬送患者の増加が顕著であり、死亡事故の発生している。こうした問題の背景には、ドラッグストアチェーン企業の急成長と店舗拡大に加え、国が医療費低減を目的として、処方薬の市販薬化推進、インターネット販売の規制緩和、市販薬購入費の税制上優遇措置などの政策の影響も無視できない。また、予防や治療面でも課題がある。予防については、従来の薬物乱用防止教育があくまでも違法薬物に特化したカリキュラムとなっていることが課題であり、治療に関しては、現行の依存症集団療法が市販薬依存症への保険適応がないこと、さらには、患者の多くが自己治療的な意図から市販薬を乱用していることから、従来の「断薬」を目標とした治療だけでは患者の治療継続が見込めず、ハームリダクションの理念を個人実践に援用した支援をせざるを得ないことが課題となっている。こうした状況の中で、令和5 年度より市販薬乱用・依存問題に関して精神医学・救急医学・薬学・法医学からなる学際的な厚生労働科学研究班(研究代表者松本俊彦)が発足している。今回応募するシンポジウムでは、研究班の各分担研究者が演者として登壇し、「精神科医療」(沖田恭治)、「救急医療」(上條吉人)、「ドラッグストアチェーン」(嶋根卓也)、「監察医務院」(松本俊彦[分担研究者である東京都監察医務院 引地和歌子の代理発表])の立場で研究の進捗と得られた知見をシェアし、今後の対策および治療の課題を議論したい。