The 120th Annual Meeting of the Japanese Society of Psychiatry and Neurology

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一般シンポジウム

一般シンポジウム29
患者からその子どもへ:精神科主治医の気づきから広がるヤングケアラー支援

Thu. Jun 20, 2024 3:40 PM - 5:40 PM D会場 (札幌コンベンションセンター 1F 中ホールB)

司会:井上 猛(東京医科大学精神医学分野)
メインコーディネーター:井上 猛(東京医科大学精神医学分野)

ヤングケアラー(young carer: YC)とは、「家族にケアを要するひとがいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートを行っている18 歳未満の子どもあるいは若年者」と英国では定義されている。子ども時代の過負担な介護の影響の一つに不安、うつ病などメンタルヘルスの悪化がある。先行研究では、YC の中で家族に精神疾患があるためにケアを要する場合が一定数あると報告し、精神科医療領域におけるYC 支援の重要性を示唆している。子どもは親の病気の原因を自らに置いて苦悩し、家庭での悩みを他人に打明けることをタブーであると感じて援助希求ができない。さらに子どもは、親の介護を辛く感じる、自分だけが楽しみを感じることに罪悪感を抱くことが多いとの経験的言及もある。このような状況下で、親の主治医である精神科医が、子どもの背景を踏まえ、その心理的体験に寄り添いつつ「あなたのお母さんは病気で、それはあなたのせいでないよ。辛い、嫌だと、思ってもいいんだよ。」と子どもにかける一言は大きな意味を持つであろう。本シンポジウムの目的は、精神科医がYC についての認識を深め、患者の子どもに対する親の病気の説明や地域連携などの実践的スキルを獲得することである。シンポジウムでは、まず、YC の第一人者である澁谷が総論的事項を述べる。次に小野が子ども時代の家族介護が青年期のメンタルヘルスに与える影響を量的視点で報告し、佐藤がうつ病の親を持つ子どもがYC 化するプロセスを量・質的視点で説明する。最後に、上野が子どもに対する親の病気の告知や、精神疾患の親に対する子育て支援(Let’s Talk about Children)などの地域連携の実践を論ずる。指定発言者には、精神疾患を抱える親とその子どもの支援を行っているNPO 法人ぷるすあるは理事である北野をお迎えする。