第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

一般シンポジウム

一般シンポジウム3
従来の精神疾患の背景に潜む、大人のトラウマへの対応

2024年6月20日(木) 08:30 〜 10:30 D会場 (札幌コンベンションセンター 1F 中ホールB)

司会:青木 省三(慈圭会精神医学研究所),武井 明(市立旭川病院精神神経科)
メインコーディネーター:青木 省三(慈圭会精神医学研究所)
サブコーディネーター:武井 明(市立旭川病院精神神経科)

日常診療において、大人のトラウマにどのように気づき、どのように治療・支援したらよいのだろうか。大人のトラウマは、PTSD あるいは複雑性PTSD というような形での受診となることもあるが、実際には、不安抑うつ、幻覚妄想、強迫、食行動異常、依存症などの、従来の精神障害・精神症状で受診し、トラウマの併存に気づくという場合が多い。それも、治療の当初は従来の精神障害・精神症状にマスクされトラウマの存在に気づかないことが多く、しばらく時間が経ってトラウマに気づくことが少なくない。トラウマに早期に気づくにはどうしたらいいのか、また、気づいたときにはトラウマを尋ねたほうがいいのか、それとも触れないほうがいいのか、など、日常診療においては迷うことが多々ある。
また、治療・支援はどのように考えていけばよいのだろうか。PTSD と診断される例に対しては、エビデンスに基づくガイドラインが作られているが、他の精神疾患に背景に潜んでいて、はっきりとPTSD とは診断しにくい例に対しては、エビデンスやガイドラインはまだ乏しい。そのため、経験ある現場の臨床家による工夫の中で対応していかざるを得ない。
一般精神科医としての日常的な診療である、話を聞き、共感し、支持する、というような非特異的な治療・支援は役に立つのか。やはりトラウマに特化した専門的な技法が必要なのか。トラウマを抱えた患者の多くは、専門外来ではなく、一般の外来に通院しており、これからの精神科臨床において、トラウマは避けることはできないものである。本シンポジウムでは、日常診療の現場で、臨床医にできる治療・支援とは何なのかを、皆で考えてみたいと思う。