第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

一般シンポジウム

一般シンポジウム33
医学教育に活かす精神病理学

2024年6月20日(木) 15:40 〜 17:40 L会場 (札幌コンベンションセンター 2F 207会議室)

司会:熊﨑 努(東京農工大学保健管理センター),松本 卓也(京都大学大学院人間・環境学研究科)
メインコーディネーター:熊﨑 努(東京農工大学保健管理センター)
サブコーディネーター:古茶 大樹(聖マリアンナ医科大学神経精神医学教室)

精神科医療においては診断基準の操作化・標準化と、治療ガイドラインの整備が進められている。とはいえ、臨床現場で遭遇する精神現象は多様であり、様々な捉え方、解釈が可能な事例は多々みられる。そのような場合も含め精神科医療が対応を要請される領域は広大であり、あらゆる状態について標準的な基準を確定するのは困難であろう。また、精神現象は、医療外の社会的な要因からも様々な影響を受けており、何が精神医学的な問題なのか画定していく段階においても、しばしば丁寧な検討、対応が必要となる。実際の臨床では、様々な手がかりから総合的な判断をして、薬物療法、精神療法それぞれの適応、あるいは環境調整の意義を検討していく必要がある。なお、各精神障害と一対一で対応するような特異的な標識が未だ発見されていないことは研究者の共通認識であり、このような状況は当面続くと考えられる。現在も、臨床的な判断をおこなう上で、患者の体験を理解し位置づけようと努める精神病理学的アプローチの意義が指摘されている。本シンポジウムでは、上記のような臨床的判断を涵養するべく医学教育に精神病理学を活かしている諸演者が登壇し、それぞれの実践と今後に向けた更なる課題について議論する。古茶は、記述精神病理学を軸とした、若手精神科医への臨床教育について紹介する。玉田は、精神病理学を活かした初期研修からの精神医学教育について述べる。滝上は、専攻医に精神病理学を教える実践を紹介し、多忙な現場で臨床のコツを伝える教育的な工夫について検討を加える。精神病理学を学びつつ総合病院の精神科臨床に活用してきた経験を、越膳が述べる。また、大学の一般教養としての精神病理学教育もおこなっている松本が、一般人との対話のために精神科医に求められる精神病理学的素養について発言する。なお本シンポジウムは精神病理学会の推薦を受けている。