第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

一般シンポジウム

一般シンポジウム4
ポストコロナ時代における不安症の展望と課題:国民のメンタルヘルスにどう関わっていくのか

2024年6月20日(木) 08:30 〜 10:30 F会場 (札幌コンベンションセンター 1F 107会議室)

司会:松永 寿人(兵庫医科大学医学部精神科神経科学講座),清水 栄司(千葉大学大学院医学研究院認知行動生理学)
メインコーディネーター:松永 寿人(兵庫医科大学医学部精神科神経科学講座)
サブコーディネーター:塩入 俊樹(岐阜大学大学院医学系医学科精神医学分野)

COVID-19 感染症の脅威や影響は、感染症法での位置づけが5 類へ格下げられて以降、一見収束しつつあるようにみえる。しかし現在も流行の消長が持続していることやコロナ後遺症に加え、この間繰り返された不安や恐怖の体験は、過剰な責任感あるいは不確実性への不耐性などを伴い、国民全体の不安感受性を高めることとなった。さらに多様な行動的変化、例えば引きこもりや受診控えなどを含む回避行動あるいは活動性低下、過度の手洗いといった極端な安全探求行動などの出現も促した。またCOVID-19 パンデミック禍で生じた対人関係様式やリモートワークといった社会的機能の在り方の多様化は、それが従来型に戻りつつある現在でも、生きづらさといったストレス脆弱性や社会的不適応の拡大、あるいは生産性の低下などに関連している可能性がある。すなわち数年にわたるCOVID-19 流行中に生じた不安や恐怖を主とする心理的・行動的変化は、ポストコロナにおいても、個人の心身の健康や行動パターン、QOL、自殺リスク、社会的生産性、医療負担やコスト増など多角的に影響を及ぼしていることが想定される。例えば強迫症(OCD)でいえば、コロナ禍で高じた汚染・洗浄に関わる強迫症状や健康不安は、今も相当数に潔癖症あるいは閾値下OCD として遷延している可能性があるが、これ自体の影響のみならず、一部にはOCD への移行リスクがあり今後その増加が予想される。しかし一旦OCD を発症すれば、個人のみならず社会全体にもより重
大なインパクトが及ぶこととなる。このような重症化を予防すること、すなわち各不安症に対し病的水準に発展させないような啓発を含む対策が喫緊の課題となろう。本シンポジウムでは、各不安症に関してCOVID-19 による影響そしてポストコロナ時代に予想されるこれからの動向を論じ、不安症に関する専門的知識をいかに国民全体のメンタルヘルスに活用すべきかについて包括的に議論し考察を深めてみたい。