佐々木 信夫1,2 (1.日本弁護士連合会, 2.佐々木信夫法律事務所)
セッション情報
一般シンポジウム
一般シンポジウム42
精神科医療従事者からみる人権、法律家から見る精神科医療
2024年6月21日(金) 08:30 〜 10:30 G会場 (札幌コンベンションセンター 1F 108会議室)
司会:伊藤 順一郎(メンタルヘルス診療所しっぽふぁーれ),東 奈央(つぐみ法律事務所)
メインコーディネーター:伊藤 順一郎(メンタルヘルス診療所しっぽふぁーれ)
サブコーディネーター:渡邉 真里子(ちはやACT クリニック)
2020 年の神出病院事件、2023 年の滝山病院事件と、患者の人権をないがしろにする虐待事件が相次いで発覚した。こうした深刻な事件に触れるたびに、国民の間には、精神科医療が患者の人権を尊重しつつ行われているのかという疑念が広まってしまう。こうした重篤な事案に限らず、精神科医療では、精神保健福祉法のもと、患者の意思に反した強制入院や閉鎖的構造での入院処遇が実施されており、このような状況下で医療者が人権を尊重する態度をいかに維持していくかは、きわめて実践的な課題である。
人権という視点から見れば、患者の意思に反して医療保護入院を実施することは、自己決定権の制約である。長期入院は、働くこと、社会活動に参加すること、家族を持つこと等の権利を剥奪しているという見方もできる。一方で、患者が自傷他害といった危険行動に及んだ場合には、家族等から責任を追及されるのではないかと懸念する医療者もいる。患者の危険行動に際して看護師等の同僚を守る必要もあるという主張もある。退院後の他害行為が生じた場合には、社会から退院判断が「無責任」と批判されるリスクがあるという者もいる。このような観点から、治療を安全に継続するためには人権の制限もやむを得ないという主張も存在する。
精神科医療が「医療」であろうとするのであれば、「患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない」(ヒポクラテスの誓い)は、原則である。このような観点に立てば、患者が「人権を侵害された」と心底感じるような環境での「治療」は、「患者に利すると思う治療法」と呼べるのかという問いが生まれる。精神科においてどのような治療環境であれば、国民は自らの人権を尊重され、自分のための治療を受けたと思えるのか。本シンポジウムは、精神科医、法律家の両者を招き、「人権」をキーワードに、精神科医療の在り方について多面的な対話を重ねる。
上島 雅彦 (竹田綜合病院)
藤田 大輔 (大和診療所)
高木 俊介 (たかぎクリニック)