The 120th Annual Meeting of the Japanese Society of Psychiatry and Neurology

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一般シンポジウム

一般シンポジウム46
臓器移植と緩和ケアのリエゾン精神医学

Fri. Jun 21, 2024 8:30 AM - 10:30 AM N会場 (札幌市産業振興センター 産業振興棟 2F セミナールームB)

司会:木村 宏之(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学分野),川嵜 弘詔(福岡大学医学部精神医学教室)
メインコーディネーター:木村 宏之(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学分野)
サブコーディネーター:成田 尚(北海道大学病院精神科神経科)

近年の緩和ケアは、死が不可避であるかどうかわからない患者のケアを含んでいる。2018 年にWHO は,その対象について臓器不全患者を含む「serious illness」患者と家族とし,治癒が可能かどうかにかかわらず,緩和ケアを実践することを重視した。現時点で、臓器移植レシピエント候補者を含むこうした患者に対する緩和ケアは、癌領域、心不全、肺疾患、腎不全、ICU 患者に対して効果的エヴィデンスが得られている。しかし、日本では緩和ケア加算は癌と心不全にしか認められておらず、臓器移植領域では十分に周知されていない。臓器不全患者の死亡までの臨床経過は、癌患者と比較して悪化と改善の繰り返しが大きいとされ(JAMA2003)、予測が難しく再移植術の希望もあり、なじまないのかもしれない。しかし、現実の臨床では、移植適応外と判断、移植術後の拒絶反応、移植術後の重篤な合併症などにより、移植の成功に辿り着けず治癒を断念してエンドオブライフケアに視点を移していかざるを得ないことが少なくない。このような臓器不全の臨床経過において、多職種チームの中のリエゾン精神科医の役割は、複雑でバランス感覚が求められる。将来的には、緩和ケアの対象が広がっていくことが予想されるため、臓器移植領域における緩和ケアの現状について共有する必要があると考え、シンポジウムを企画した。今回、臓器移植領域と緩和ケアについて、西村勝治先生(東京女子医科大学)が総論、成田尚先生(北海道大学)が心臓移植領域、大橋綾子先生(九州大学)が腎臓移植領域、杉田尚子先生(京都医療センター)が臨床倫理領域について発表する。そして、緩和ケアの経験が豊富な竹内崇先生(東京医科歯科大学)に指定発言をいただき、各シンポジストや参加者との議論を深める予定である。
尚、本シンポジウムは日本総合病院精神医学会臓器不全・移植関連委員会により企画され、同学会の推薦を得ている。