藤田 純一 (横浜市立大学附属病院児童精神科)
セッション情報
一般シンポジウム
一般シンポジウム48
児童臨床における短い診察時間の中でのアセスメントの工夫:知識を実臨床に適正化し、最大の効果を目指す
2024年6月21日(金) 08:30 〜 10:30 P会場 (札幌市産業振興センター 技能訓練棟 3F セミナールーム1)
司会:稲垣 貴彦(医療法人明和会琵琶湖病院/滋賀医科大学精神医学講座)
メインコーディネーター:稲垣 貴彦(医療法人明和会琵琶湖病院/滋賀医科大学精神医学講座)
患者と初めて対面した瞬間から、私たちのアセスメントすなわち適切な治療を検討するステップが始まる。アセスメントには症状と経過を評価する病名診断のみならず、治療関係や治療環境の検討も含まれる。アセスメントのためには十分な情報を得なければならない。
児童青年期領域において初診から治療開始までの間に、ヨーロッパ各国は概ね120 分費やし、治療開始後のフォローアップの1 回の診察に概ね30 分費やす。一方で、本邦では多くの医療機関で、初診のために60 分の診察1 回しか費やせず、フォローアップの1 回の診察は概ね10 分である。ヨーロッパ各国に比べ本邦の臨床状況の中では得られる情報の量は見劣りすると言わざるを得ない。日本小児心身医学会の報告によると、本邦の小児科医の60% 程度はメンタルヘルスの問題に1 回あたり30 分以上の時間を費やしているという。残念ながら本邦の児童青年精神医療の現場では小児科医療と比べても診察時間は短く、得られる情報量も少ない。
保険診療の規定を考慮するとこれを拡充するのは極めて難しい。量に劣る環境の中で適切なアセスメントを行うためには、得られる情報の質を向上させる工夫が必要である。それに成功すれば、診察の効率が向上し診察時間の短縮が可能になるとも言える。しかしその議論を見ることはほとんどない。
今回我々は、児童青年領域において良く見られる以下の病態を基に、初診の短い診察時間の中で得られる情報の質を高める工夫について検討する。60 分の診察時間の内、治療方針を確定させて心理教育をするのに10 分必要と仮定し、50 分の中でどう診察を進めると効果を高められるか検討する。児童精神科医のみならず児童青年精神医療に関わることのある一般精神科医にとっても有用な情報であろうし、一般精神医療においても応用可能なエッセンスが提供できれば幸いである。
1: 不登校
2: 自傷
3: 易怒性
4: 食行動の異常
稲垣 貴彦1,2 (1.医療法人明和会琵琶湖病院, 2.滋賀医科大学精神医学講座)
辻井 農亜 (富山大学附属病院こどものこころと発達診療学講座)
鈴木 太 (上林記念病院こども発達センターあおむし)
大野 裕 (一般社団法人認知行動療法研修開発センター)