第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

一般シンポジウム

一般シンポジウム5
いま、統合失調症診断の際に留意すべき疾患・状態:症状や病態の近似と類似

2024年6月20日(木) 08:30 〜 10:30 G会場 (札幌コンベンションセンター 1F 108会議室)

司会:尾関 祐二(滋賀医科大学),髙木 学(岡山大学学術研究院医歯薬学域精神神経病態学)
メインコーディネーター:尾関 祐二(滋賀医科大学)
サブコーディネーター:髙木 学(岡山大学学術研究院医歯薬学域精神神経病態学)

統合失調症は長く精神医学の対象となってきたが、医学の発展と共に新たな視点が提供され続けている。それと共に、かつて操作的診断基準に基づいて統合失調症と診断されていたが、現在は器質的な病名に変更となる場合も少数ずつであるが増えている。E. Bleuler はかつてSchizophrenie の命名において、この概念はかなりの数の疾患を包含している可能性を指摘しており、これは統合失調症の“ 症状の多彩さ” に現れていると思われる。DSM-5-TR には、「統合失調症は不均一な臨床症候群であるため、統合失調症を持つ人は、ほとんどの特徴的症状において本質的なばらつきがある」と記載されている。疾患の“ ほとんどの特徴的症状における本質的なばらつき” が存在することは疾患の全体像が本質的に掴みにくいことを示している。しかし臨床場面では統合失調症と診断し治療を施すことが必要とされる。更に、治療がうまくいかない場合は、統合失調症の診断を疑い、試行錯誤し続ける必要がある。一方、研究を行う際には対象群の均一性が求められ、均質性の乱れはデータの根幹にかかわる。こうした現状を鑑み、統合失調症の診断を下す際、現時点における医学的知識を基に、鑑別や併発を常に考慮し、意識に留めておきたい疾患や状態を整理する目的で本シンポジウムが企画された。具体的には発症の好発年齢順に、自閉スペクトラム症や注意欠如多動症、解離症状、自己免疫性精神病、神経変性疾患に注目した。こうした各疾患を専門とする先生方に基礎的、臨床的背景から知見をご紹介いただく。本シンポジウムは診断のみならず、精神病症状に対する薬物、非薬物治療を含む治療の選択や支援内容の検討の際、有用な知識を提供するものと考えられ、臨床場面を通して社会的な視点からも有意義なものとなると期待される。

横田 修1,2,3, 三木 知子4, 石津 秀樹5, 安田 華枝5, 原口 俊6, 寺田 整司7, 髙木 学7 (1.きのこエスポアール病院精神科, 2.岡山大学医学部, 3.岡山大学大学院精神神経病態学, 4.岡山大学病院精神科神経科, 5.慈圭病院精神科, 6.NHO南岡山医療センター脳神経内科, 7.岡山大学学術研究院医歯薬学域精神神経病態学)