黒木 俊秀 (九州大学大学院人間環境学研究院臨床心理学講座)
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一般シンポジウム
一般シンポジウム51
精神疾患を理解する視点の多様化が研究、日常臨床、精神鑑定に及ぼす影響:DSM-5/ICD-11/RDoC
Fri. Jun 21, 2024 10:45 AM - 12:45 PM D会場 (札幌コンベンションセンター 1F 中ホールB)
司会:田口 寿子(神奈川県立精神医療センター),柏木 宏子(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院)
メインコーディネーター:柏木 宏子(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院)
サブコーディネーター:田口 寿子(神奈川県立精神医療センター)
精神疾患の病因については、遺伝的および神経学的基盤の解明に多大な努力がはらわれているものの、完全な理解は得られていない。診断基準については、DSM-5 によると、DSM-5 は先行妥当性、併存妥当性、予測妥当性が十分ではないとされている。ICD に関しては、2022 年にICD-11 が発効されたばかりである。そのような中、診断域を超え、神経回路に根差した新たな分類を目指したRDoC(研究領域基準)や、精神病理学的症状と不適応行動の共分散から導かれる次元分類システムであり、従来よりも有益な研究および治療目標を提供することを目指したHiTOP(精神病理学の階層分類法)が注目されている。他方で、これらの流れが、研究、日常臨床、精神鑑定にどのように影響し、我々がどう対応していくべきかについては、十分なコンセンサスが得られていない。DSM-5 からICD-11、RDoC、HiTOP といった流れの中で、カテゴリカルモデルからディメンショナルモデルへのパラダイム・シフトが起きている。これらのパラダイム・シフトは、患者や家族への説明の仕方にも影響が生じうる。例えば、ICD-11 では、パーソナリティ症においてディメンショナルモデルが採用され、従来よりも可変的で回復可能なものとして説明がしやすくなるとの指摘がある。他方、従来からのカテゴリカルモデルは、疾患を人格から切り離すことで、治療の対象としてとらえることに納得しやすいであろう。これらの変化は、責任能力判断を目的とした精神鑑定にも影響を与えずにはいられない。責任能力は、精神疾患と犯行との関連を通して論じられるものであるが、その前提として診断がある以上、診断体系の変化に関する議論は避けて通れない。診断体系はこのようにあらゆる領域において大きな影響を有するものである。本シンポジウムでは、各領域特有の問題の提示の中から新たな視点を得て、今後議論すべき方向性を見出すことを目指す。
橋本 亮太, 伊藤 颯姫, 松本 純弥, 岡田 直大, 根本 清貴, 三浦 健一郎, 橋本 直樹, 大井 一高, 高橋 努, 肥田 道彦, 山森 英長, 藤本 美智子, 長谷川 尚美, 小池 進介, 中村 元昭, 岡田 剛, 宮田 淳, 沼田 周助, 鬼塚 俊明, 吉村 玲児, 中川 伸, 渡邊 嘉之, 尾崎 紀夫, 安田 由華 (国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所精神疾患病態研究部)
榊原 英輔 (東京大学医学部附属病院精神神経科)
村松 太郎 (慶應義塾大学医学部精神神経科学教室)