第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

一般シンポジウム

一般シンポジウム78
仮想現実空間と精神医学:不登校・ひきこもり支援にメタバースをどう活かすか

2024年6月22日(土) 08:30 〜 10:30 A会場 (札幌コンベンションセンター 1F 特別会議場)

司会:藤田 純一(横浜市立大学附属病院児童精神科),加藤 隆弘(九州大学大学院医学研究院精神病態医学/九州大学病院集学的痛みセンター)
メインコーディネーター:藤田 純一(横浜市立大学附属病院児童精神科)
サブコーディネーター:加藤 隆弘(九州大学大学院医学研究院精神病態医学/九州大学病院集学的痛みセンター)

【目的】2021 年に旧Facebook 社はメタバース部門に100 億ドルを投じ自社の名前をMeta に改名して大きな注目を浴びたメタバースは没入体験が得られる仮想現実空間の中で人々が匿名性を保ちながら物理的な距離の制約を超えて相互接続が可能となる技術革新である。これは遊びや社交にとどまらず、日常生活全般に応用可能性を広げた。2022 年以降メタバース上の精神医療・福祉サービスが度々話題となり、海外では実際メタバース上に購入した土地でメンタルクリニックを開業する企業が現れ、国内でも心理相談事業をメタバース上で展開する企業や不登校・ひきこもり支援を開始する民間団体も生まれている。メタバースを用いた各々の実践は試験的段階で規模こそ小さいが、今後の展開が期待される内容である。特に、対人不安や社会的コミュニケーションに不安を抱え、不登校・引きこもり状態が持続する若者にとって新たな相談先・居場所として機能する期待できる。【方法】社会的ひきこもり・不登校の問題とデジタル社会について過去・現在・未来に渡って概観し、国内において医療・福祉・教育分野でメタバースの活用に取り組む専門家と今後の社会実装の可能性や解決すべき課題について検討する。【成績】精神医療・福祉領域におけるメタバースの活用は不登校・引きこもりの若者にとっては現実の治療・支援にアクセス困難な状況や社会参加の障壁による負担を軽減する一つの福音となるかもしれない。しかしながら、有用性、安全性、公平性、情報セキュリティの問題など一定の課題がある。【結論】社会的ひきこもり・不登校の問題を抱える若者に対してメタバースを有効活用するためには、当事者、医療・福祉・教育分野の支援者、開発を手掛ける企業や研究者が一体となって一層議論を深める必要がある。