第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

一般シンポジウム

一般シンポジウム83
精神疾患の認知・社会機能の改善に役立つ睡眠・覚醒の知識

2024年6月22日(土) 08:30 〜 10:30 G会場 (札幌コンベンションセンター 1F 108会議室)

司会:三島 和夫(秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座),住吉 太幹(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・予防精神医学研究部/国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部)
メインコーディネーター:三島 和夫(秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座)
サブコーディネーター:住吉 太幹( 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所児童・予防精神医学研究部/国立高度専門医療研究センター医療研究連携推進本部)

統合失調症および双極性障害では、注意、学習・記憶、抽象的思考、実行機能など広汎な認知機能ドメインに障害がみられる。これら認知機能障害は、発症初期から存在し、臨床経過中も長期にわたり持続し、就労能力や日常生活機能といった社会機能に対して大きな支障をもたらす。一方、統合失調症および双極性障害では不眠、過眠、リズム障害などの多様な睡眠- 覚醒障害もまた高率に併存し、その頻度は不眠症状が約50 〜 80%、過眠症状が約30% 以上に達する。これら不眠・過眠・リズム症状や各種睡眠パラメータと認知機能障害の重症度との間に相関性が見いだされている。夜間睡眠は、記憶の固定や消去に寄与しており、学習や報酬予測を通じて、前頭前野のDecision Making に強く影響する。また、夜間睡眠の量、質、リズムが整うことで日中の覚醒度が高まる。実際、睡眠障害により集中力と記憶力の低下、実行制御の障害が認められ、客観的眠気とその障害度が関連することが示されている。さらに短時間睡眠(睡眠不足)もまた、短期記憶、選択的注意、実行機能、意思決定、処理速度などの認知プロセスに悪影響を及ぼす。本シンポジウムでは、精神疾患患者に好発する各種睡眠問題(不眠、過眠、リズム障害、催眠鎮静系薬剤使用)が患者の認知機能、社会機能、ひいてはQOL に及ぼす影響をレビューし、実地臨床で役立つ対策について論議を行う。