第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

一般シンポジウム

一般シンポジウム87
賛否両論ある病気(Contested illness)への対応

2024年6月22日(土) 08:30 〜 10:30 P会場 (札幌市産業振興センター 技能訓練棟 3F セミナールーム1)

司会:宮岡 等(北里大学/医薬品医療機器総合機構),齊尾 武郎(SMBC日興証券ウェルネス推進室)
メインコーディネーター:宮岡 等(北里大学/医薬品医療機器総合機構)
サブコーディネーター:齊尾 武郎(SMBC日興証券ウェルネス推進室)

種々の身体愁訴を呈するが、身体には異常所見がなく心理的要因が強いのではないかとして、身体各科から精神科に対診が求められることがある。必要に応じて向精神薬を投与したり、支持的精神療法を行ったり、生活環境を改善するよう指導したりするが、難治であることが多い。こうした患者が精神科的な治療意欲をなくす理由のひとつに、身体疾患を思わせる診断名を告知されることがある。それには、第一に慢性疲労症候群、線維筋痛症などという医師間でも意見の食い違いが目立つ場合があり、さらに起立性低血圧、顎関節症などのように典型的な病態はあるが、それが過剰に解釈されているのではないかと疑いたくなる例などが含まれる。これらはしばしば医師間に治療方針の違いを生み、いずれの医師も患者の症状を和らげることを目的としているが、結果的にかえって患者を混乱させることが多い。このような病態は「 Contested illness」と呼ばれているが、まだ日本では定訳もないし、研究も少ない。本シンポジウムでは、こうした医学界の中でも疾患としての位置づけに異論があり、患者と医師との間でも想いが擦れ違う各種の病気を取り上げ、患者中心医療の文脈から精神科がどのように関わって行くべきかを考える。また、フロアとの間でチーム医療の観点から、種々の職制の人たちや当事者・患者・一般市民との対話を図りたい。シンポジウムでは齊尾が医療のあるべき姿、宮岡がリエゾン診療で困難のあった症例などをとりあげ、さらにこのような症例に出会う機会の多い総合診療科の宮田、痛みを専門とする麻酔科医の柴田の経験を聞きながら、精神科医の考え、対応すべき問題を探りたい。